第12章 夏の思い出
「してねえぞ蝶!してねえからな!?今のは言葉のあやってやつだ、俺がしてるわけねえだろ!!?」
『中也が言葉のあやなんかで私に我慢とか言わないの知ってるよ』
「世の中必要なんだよこういう我慢は!!!」
『……舐める…?』
「聞けっつの!!!あと舐めるとか言うんじゃねえ舐めるとか!!!!!」
顔を真っ赤にさせた中也。
この人が我慢するところなんてそれ以外にないんだから、私だってそろそろ覚えてる。
『いいじゃん、今二人なんだもん』
「言うのも恥ずかしがってる奴が言うんじゃねえよこの馬鹿!!!そういうのは考えねえでいいから!!な!?」
『だ、だって折角ちょっと勉強したのに全然中也がさせてくれないから…』
「だから、お前にんな事ばっかさせてたら俺にも罪悪感が……あ?勉強?」
ポロリとこぼれた言葉を隠すように、聞き返された瞬間にそっぽを向いた。
拙い、非常に拙いことになった。
『な、なんでもないよ』
「お前風邪ひいたらそれ以外に嘘の吐き方ねえから分かりやすすぎんだよ、とっとと吐けこら」
ピクピクと口角を引き攣らせる中也にギクリとして、恐る恐る白状する事にした。
…縄無しバンジーの刑はごめんだ。
『…わ、私ばっかりされてばっか…だから、その……ネットで方法、とか調べて……』
ごにょごにょとそこまで口にした。
するとやはり予想通り、冷や汗をかいている中也。
ああ終わった、いやらしい子だって思われちゃった、今度こそ幻滅されちゃった。
どう言い訳しようか考えたりするものの、言い訳も何も思いつかないパニック状態の頭の中。
覚悟を決めて中也からの返事を待つ。
しかし中也の言葉は私に失望したようなものではなくて、私の予想に反するものだった。
「……本当、健気な奴」
聞こえた声にえ、と間抜けな声を出して、目を丸くする。
「中学生にさせるって絵面にどうしても罪悪感とか色々募るもんがあってな…それも相手はお前だし……」
『…嫌?』
「嫌なんじゃなくて悪い事させてる気分になんだよ、無理矢理させてるっつうか背徳的っつうか…ここの世界じゃ、こういう事はまだ中学生には早ぇ事だから」
けど、と困ったように微笑みながら中也はまた私を撫でる。
「そんだけ考えてくれてんだ、家でしてもらおうかね」
『!嫌じゃ、ないの…?』
「寧ろ嬉しいくれえだよ」