第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
「ったく本当にお前は…折角綺麗にしてんのに、傷めちまったら元も子もねえだろうが」
『はーい』
「反省してんなら次からちゃんと乾かせよ』
本当なら、中也さんからの言いつけだからそうしますって言うところ。
しかし私の中也さん欲求は、私の考えを悪い方向へと機転を効かせる。
『……でも自分で乾かしてたら、もう中也さんに乾かしてもらえなくなっちゃうんでしょ?』
小首を傾げて振り向けば、中也さんはきょとんとして暫くこちらを見続けていた。
あれ、待って。
私今何だかとても子供っぽい事を言ったんじゃ…
「…なんだ、俺に乾かして欲しいんなら素直に最初からそう言えばいいじゃねえか」
『ふえ!?か、乾かしてほしいとかそんなっ…』
まさかの返しに思わず声が高くなる。
「なら乾かさなくてもいいのか?俺はまあどっちでもかまわないんだが」
にやけた様子もなく聞いてくる。
本当に天然でこんな意地悪を言うのだから、素直に言わざるを得ない。
『か、乾かしてもらうのがいい…』
中也さんが温風を冷風に切り替えるのと同じくらいに、恥ずかしさで顔を自分の膝に埋める。
「そうかそうか、んじゃま、風邪だけひかねえようにタオルドライだけは忘れずにしとけよ」
冷風を一通り当てられてから、頭を軽く撫でられ、中也さんはドライヤーを戻しに洗面所に行ってしまった。
なにこれ、中也さんに一杯食わされた気分。
私からのアタックには全然なびかないくせして、こうやって私の気持ちばっかり持ってっちゃうんだ。
『……てか本当、なんでこんなに髪乾かすの早いの。上手すぎ』
八つ当たりをするように自分の髪とにらめっこする。
「ま、慣れてたからな。体がまだ覚えてんだろ、特にお前の髪質は」
洗面所から出てきて、こっちに来い、と催促される。
中也さんの家はマンションの一室の2LDKで、私用に一部屋丸々とってくれていた。
「一応綺麗なままにはしてあるが、流石に全部もう小せえな。すまねえが、ここのベッド使えなさそうだから……な、なんだよ」
『いいえ〜?何でも〜』
満面の笑顔を向けてにっこりすれば、はあぁ、と折れてくれたような溜息が漏らされた。
「…俺のベッドは一人用だぞ。昨日より狭いし、お前だってもうチビじゃねえし……それに年頃の女だろ、大丈夫なのか?」
中也さんの口から出た言葉に私は目を見開いた。