第12章 夏の思い出
「いや、素直ってかこれは…」
少し声を小さくする立原をよそに、本能の赴くままに中也に抱きつく。
『中也のとこ好き、ぎゅってするの〜…』
「そうだな、好きなだけくっついてていいぞ蝶。ああもう俺書類明日に回そうかな」
『蝶と一緒いる??中也に撫で撫でされてたい♪』
「よし立原、俺はこれから蝶の事を撫でなくちゃなんねえからお前代わりに書類整理を「いや、正気に戻ってくれ中原さん!!?」俺はいつだって大真面目だぞ。ほら写真写真」
「言えねえ…っ、中原さんの仕事用のパソコンに大量に蝶の隠し撮り写真のファイルがあるなんて絶対ぇ言えねえ……!!!」
何故か一人で半泣きになる立原に気が付いて、どうしたのと声をかける。
するとパッとこちらを向いて、ブワッと立原は涙を溢れさせた。
「蝶…っ、お前いい奴だなぁ……!!!中原幹部が書類整理俺に任せてお前といちゃつきてえってんだよ!!」
『中也、立原いじめちゃダメでしょ?立原いじめていいのは私だけなんだよ?』
「ああ、そうだったな悪かった。立原いじめはお前の楽しみだもんな」
「え、俺の心配じゃなくてそっち!?」
また一人で忙しなくあたふたする立原に目を向けて、中也と二人でキョト、と目を丸くする。
「お前、こいつは今酔ってるわけじゃねえんだぞ?最大級に素直んなってる上に、少々いつもより子供らしくなって『子供扱いする中也嫌ぁい…』そうだな、いつもより可愛くなってんな」
再びご満悦になってふにゃりと笑うと、今度は立原が口を開く。
「あんたもいつもより甘っ甘だっつの……つかやっぱ餓鬼らしくなって『餓鬼って言われるの…大っ嫌い……っ』あーすまねえすまねえ!!そんな思いつめんじゃねえって、可愛いっつっただけだから!!!」
餓鬼という単語に過剰に反応してしまい、涙腺が緩んだのか目が潤んできた。
『立原が餓鬼って言ったあ…澪より立原のが餓鬼だもん……!!』
「ああああ蝶、俺の方が餓鬼だから泣き止んで…っ?あ?レイ……?」
「…まあ気にすんな」
『?……中也中也、今日ずっとここいる??』
ああ、今日は一日ここにいる
中也に抱き寄せられて、そっかぁと再びはにかんだ。
『蝶悪い子だね、風邪ひいたのに嬉しいの』
「はは、学生なんかそんなもんさ。でも出来るだけ早くに治るようにな」
『はあい…』
「…レイ……?」