第12章 夏の思い出
「まだキスしたくねえの?」
『は…っ、ら、ってさっきいっぱいして……』
「……目隠されて感じてんのな。いつもより敏感になってる」
『ひ…っ』
耳を甘噛みされてとてつもない刺激が私の身体を電流のように走り抜けた。
短く高い声を上げ、小さく声を漏らしながらもなんとか呼吸を整えようとしていれば、中也が疑問を持ったような声を出してそっと手を離す。
ぼやけた視界で薄く目を開いて中也の顔を見ようとするも、はっきりとは見えない。
「おまっ、泣いて…!?怖かったのかやっぱり!?悪かった、無理矢理は……蝶…?」
私の上から退こうとする中也を、解放された両腕で抱きしめる。
『怖くない、から…続き、して……っ』
「いや、だってお前あんな恥ずかしがって…続きって、どうしろってんだよ?」
『………手、押さえられるのやぁ…中也さんに触れないの、やら…』
「何お前、マジで俺に朝までキスされ続けてえわけか?」
声を出すのは流石に躊躇われてコクリと小さく頷いた。
キスするって言ったくせに、全然キスしてくれなくて意地悪して…こういうことばっかりするから切なくなって。
「耐えれっかな俺…つか今度は蝶の方がする気になっちまってんもんな。こりゃレアもんだし有難く調子に乗らせてもらいますか」
『ふ、え…っ?……ッ!』
私の髪にサラリと指を通して頭を撫で、もう片方の手の指で私の唇をフニフニとつつく。
ゾクゾクする感覚に身をよじり、彼のシャツをキュ、と握る。
左右にゆっくりと撫でたかと思えば下唇を少し下に開かされたりと、好きなように弄られる。
しかしその動作に、私の瞳の潤みは増す一方だった。
『や、ぁッ…キス……は…っ?』
「あー…そうだな。舌使ってほしい?」
『!………たまには』
「おお、まさかお前の口からんな言葉が聴ける日が来るとは…んじゃ、折角時間あんだからもうちょっとリラックスしながら出来るようになってみねえか?」
ひねくれたように見せかけたのに、嘘はつけなかった。
素直になるしかなくなった私の身体。
しかし意外そうに言う彼からの提案に、またしても疑問が浮かぶ。
『リラ…?』
「お前、だいたいいつも緊張しちまうだろ。時間かけてゆっくりほぐしてってやる……試しに指で触れてやろうか?舐める方なら上手ぇみてえだし」
『舐める方??』
「あー…何でもねえ」