第12章 夏の思い出
「おお…ってお前それしか言ってねえよな前も」
『……だ、って…』
「んん?…まあ、呼べそうな時にでいいさ。でも俺、お前の事は対等に見てるつもりだからよ」
実際は上に見ちまうことの方が多いがな、と言いながら、中也さんは楽にしてろと私を横にならせる。
何気に自分の膝を枕にさせてるあたりがこの人らしい。
上から覗き込むようにして撫で続けられ、それに気を良くして中也さんの手に擦り寄った。
『対等…いいね、対等。そういうの好き』
「なら良かった…ああ、さっきちゃんと見てたぞ。触手七本」
『!!』
あんな方法思いついたところで誰も出来ねえよ、と中也さんは嬉しそうに笑う。
自分の事のように笑顔になって、よくやったと心から褒めてくれる。
今日はいい日だな、こんなに中也さんに褒めてもらえる日なんて…あるにはあるけどここまで嬉しいことってそうそう無い。
それに知らなかった、この人が私の事を上に見てしまうことがあっただなんてこと。
だから告白された時なんかはこの中也さんが敬語だったのかな、なんて今になってようやく思う。
『中也さ…………は、そんなに呼び捨てのがいいんで…の?』
「澪さんモードにはまだ入りきってませんってか…ま、そっちの方がなんかいいだろ。俺がお前に対して普段から蝶さんとか言って敬語喋ってるの想像してみろよ」
例えば今のような状況下…よくやった、ならよく頑張りましたね。
そして中也さんの微笑みがオプションとして付属され…
『………かっこよすぎて悶え死にそう』
「気持ち悪いっつうとこだろそこは!!?」
『だって中也さんからそんな…っ』
「何想像してんだよお前は!!!」
朝起きて、爽やかなスマイルと共におはようございます…いい。
帰宅後、今日の昼食も美味しかったです、やはり俺の選んだ女性…と大人しく感動される……とてもいい。
そして甘やかす時、あぁまたですか?仕方ないですね、本当に甘えたがり屋さんなんですからと普段とは違う包容力で……とてもよろしい。
『ああもうダメ中也さんがダメ』
両手で顔を覆って妄想の膨らむ脳に何とかストッパーをかける。
これ以上は危ない、私がやばい。
中也さんに悶え殺される。
「俺がお前に何してるってんだよ…」
『…あ、でも名前呼びは蝶の特権だ』
「!そう、それだよそれ!!そういう事だそういう事!!」