第12章 夏の思い出
「それって……いや、いいんだぞ?それもそれで美味しい部分があるといえばあるし需要も勿論」
『何言ってるの中也さん…?』
「敬語使ってんのもいいっつってんだよ可愛いなこの野郎!!!」
『わっ!?ちょ、いきなりなんで!!?』
突然強く抱きしめられて、わしゃわしゃと頭を撫で回された。
嫌いじゃないけどこれだと髪が…ってそうか、今日はくくってないからセーフだ、セーフ。
「……でもあれだ。お前、別に餓鬼ってわけじゃねえんだ…トウェインの奴にだって最初敬語だったじゃねえか。立原なんかに至っては最初からタメだったって聞いてるし」
『だ、って…中也さんは、中也さんで来てま……来てるし。慣れてない…から』
言ってしまえば尊すぎて恐れ多い。
それを忘れて無意識に外れることもあるけれど、やっぱりなんていうか…最早崇拝してるというくらいのレベルには好きすぎる。
あと恥ずかしい。
これに限る。
「職場の奴とかなら分かるが…俺だぞ?そろそろ慣れてみようぜ、練習だ練習」
『れ、練習…?どうすれば……』
「…まずは前みてえに敬称省いて、何かいってみ『無理』……ほう?」
中也さんの雰囲気が変わって、ビクリと肩を跳ねさせた。
なんでだろう、とてつもなく嫌な予感がする。
中也さんが私を抱きしめたまま耳にキスをして、それにまた肩を震わせる。
『…ッ、ハ……ぁ…っ、なんで今……っ?』
「今じゃなかったらいいのかよ?……澪」
『!!!……ヒ、ッ…や、ぁ…それずる「お前がしねえんなら俺が手本代わりにしてやるよ」そこで喋らな…いでっ!!』
ただでさえ弱いのにまた澪って呼んできて……恥ずかしいし擽ったいしで散々だ。
「澪の弱ぇ部分は知り尽くしてるつもりだからな…なんならこの場でイイ事してやってもいいんだぜ?」
『……っあ…、それ、は……ここじゃ、やあ…ッ』
中也さんの指が頭を軽く撫で、流石にそれは冗談だ、と宥められた。
それに安心して彼に回す腕に力を込める。
『意地悪やだ…っ、悪い事してない……』
「俺がやってみてほしいだけだ」
ずるい言い方に、ずるい顔…
私を従わせるだけのものを、この人は全て持っている。
本能的に分かってるのか、意図的にやっている事なのか…どちらにしても凄い人だ。
そしてやはり、私の大好きな人だ。
『……ちゅ、うや…好き、…』