第12章 夏の思い出
私に首輪を付けた男の子の事を話すと、トウェイさんがああ、と人差し指を立てた。
「名前までは知らないけど知ってるよその子なら。つい最近入ったばっかりで…って言っても何ヶ月も前だけどね。頬にある大きい傷が印象的だし、何より本当にまだ子供だったから」
「了解した、頬にでけぇ十字型の傷がある餓鬼だな。とりあえず一回殺しに」
『だからダメって言ってるでしょ中也さん』
「安心しろ、一瞬で終わらせてや『嫌いになりますよ』……冗談だっつの」
焦り方が冗談じゃない。
ちゃんと止めておかなくちゃ危険だこの人。
「うん、じゃあ組合の方で彼を辿っていってみることにするよ。潜入してたってことなら住所とか前職とかは間違いなく嘘のものだろうけど…」
『帰る場所があるならいいですけど…お願い。何かわかったらまた教えて』
いい具合に話がまとまった……はずなのだけれど、何がそんなに不満なのだろうか。
さっきから中也さんが異様にむしゃくしゃしているような気がする。
なんていうか…
「……トウェイン、手前烏間さんに言いに行かなくていいのかよ。講師の話」
「あ!!本当だ、行ってくる!!!」
…………拗ねてる?
バタバタと出ていったトウェインさんの足音が遠ざかってから、中也さんの方に顔を寄せる。
すると何だよ、と少し後退りされた。
『中也さん、何か怒ってます?』
「なんで俺が怒んだよ」
『…じゃあ、妬きました?』
「俺はいつでも妬いてるが」
中也さんの返しにキョトリとするも、そのまま目を見つめ続ける。
『でも何か今は違う……拗ねてません?』
「は?俺が拗ねるとか…餓鬼じゃあるめえし」
『じゃあなんでそんな顔してるんですか』
ピクッとまた眉根を寄せる中也さん。
これは相当何か思うところがあったんだろう…でもどこだ?
トウェインさんには横抱きにされたくらいで、交際を始めてからというもの、あの人からはそういった類の行動を慎まれてるし。
軽く見えるのに変なところ律儀だから、いい人だし何も妬く要素なんて無かったはずなのに。
ジ、と見つめ続けていれば、観念したように顔を逸らして、中也さんは口を開いた。
「………ろが」
『…へ?……も、っかい言ってもらえ、ます…?』
「!だ、から……お前、甘えに来る時しか………その、敬語外さねえだろって…」
『……そ、それ…?』