第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
今日何回目だよと思えるくらい、情けない事に蝶に反応する俺の身体。
折角煩悩に抗おうと顔を後に逸らしてるのに、それを覗き込んでくるから意味がない。
天然なのか?タチ悪ぃぞ。
なんて考えてるうちに、後ろに体重を掛けすぎて手を滑らせ、倒れ込んでしまった。
『え、きゃっ…』
「!危ねっ…蝶、大丈夫か……っ!」
見ると、俺は蝶に押し倒されたような形になっていた。
やめろ、これ以上こいつを見たらダメだ。
本能がそう呼びかける。
俺を見つめるこいつに、理性が持っていかれる。
『大丈……っ、え、あのっ!!』
気付けば、身体が勝手に動いていた。
何を考えたのか、蝶の両腕を掴んで、今度は俺が押し倒す。
朝こうなった時なんて、びっくりはしたがこんな胸の高鳴りはなかった。
それもこれも、恐らく新幹線でこいつを感じさせちまってから……蝶に、“女”を感じてから。
相当自分自身が危ない状態だなんてこと、分かってる。
しかし、自覚すればするほど本能に忠実になる。
『ちゅ…やさ、ん…?』
恥ずかしいのか、顔を赤らめ、蕩けたような目で俺を見つめるこの少女。
薄く開かれた唇に、どうしても目がいってしまう。
ダメだ、やばい。
自身に襲いかかる背徳感と己の欲求。
俺自身に、頭に、本能に…身体に……
「……すまねぇっ、…」
『………へ、っ…』
________クる___
なんとか唇は避けたが、遂に俺は蝶の意識がある内に……
彼女の額に、口付けを落としてしまった。
「………ごめん、今のは忘れてくれ…今日は、どうする。俺としては、こっちに来てもらってもいいんだが、お前が嫌なら…!蝶?」
首に回される、蝶の力のない腕。
『嫌なわけ、ないじゃないですかっ…私、中也さんになら何されたっていいんです!忘れてなんて言わないでくださいっ……そんな事、…ん、っ』
それ以上言われると自分が自惚れてしまいそうだから、無理矢理黙らせようと、片側の頬に手を当てた。
「……わざとお前の弱いところを触るような男だぜ、俺は」
俺は、お前の反応を見て、こんな風に愉しむような男だぞ。
『…気に、しませっ……は、ぁっ…』
「そうか……悪かった、帰ろう。お前の部屋も、ちゃんと前のまま綺麗にしてある。」
『ぇっ……あ……はい…っ』
蝶の切ない声だけが、妙に耳の中に残っていた。