第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
言った瞬間、太宰さんの表情から光が消えた。
「蝶ちゃん、私にそんな物を持ってくるだなんて、新手の嫌がらせか何かかい?」
『いえ、中也さんにお土産相談してみたらこれでいいだろうから買ってくるって』
「あいつからの物を私に貢ぐだなんて!そんな子に育てた覚えはありませんよ!」
ぐっと目に涙をためてこちらを睨んでくる。
子供か。それとも私の母親か何か。
『だって中也さんに頼まれたら私断れませんもん、知ってるでしょ?……しかも蟹缶より喜んでたくせに』
言えばギクッとして冷や汗を流し始める太宰さん。
『蟹缶より麻縄が嬉しかったんですもんね、ならその蟹缶私が食べます』
むくれて言うと、太宰さんはすぐに蟹缶を避難させた。
「い、いやいや蟹缶は凄く好きだから!それにここのやつ、人生で一度でいいから食べてみたかったのだよ!!麻縄なんかこうしてくれるっ」
今度は麻縄を放り投げる始末。
だから子供かって。
しかし放り投げられた麻縄は私の手元へとやってくる。
私の能力さえあれば、こんなことは造作もない。
『太宰さんがいらないんなら、私がいただきますね?中也さんの物ですから』
見ると、くっととても悔しそうにしている。
「あいつからのものなら麻縄なんて惜しくも何ともないさっ……くうっ!」
嬉しかった分余計に悔しいんだ。
やったね中也さん、嫌がらせ大成功だよ。
そして中也さんで思い出した。
『あ、あの太宰さん……その、ありがとうございました。お陰様で色々…また元に戻れそうですし、中也さんにもまた会えて……っ』
そうだ、それもこれも、太宰さんがいなくちゃこんなに上手くはいってない。
「蝶ちゃん!?あいつ、喋ったのか…本当に余計なことしてくれるねあのチビは。蝶ちゃん、私は蝶ちゃんの笑顔を見て癒されたいという自己満足の為にこうしたんだ、お礼なんていいよ!」
『でも、言いたくてっ…ありがとう、』
言いかけて、それに気がつくまでに時間はかからなかった。
太宰さんに抱きしめられてる。
「いいんだよ、蝶ちゃんが幸せなら。あいつにも貸しを作れるしね」
そんな悪態はついているものの、いつものふざけた様子は感じられなかった。
『…私、ちゃんと太宰さんの事も大好きですから。』
「……うん、分かってるさ。あいつが嫌になったらいつでも相談しにおいで?」
本当に、ありがとう