第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
しかしこのほんわかとした気持ちは、またすぐに消えてしまう。
「幸せに暮らす?社員寮から出る!?どういう事ですの蝶さん!!」
しまった、こっちまでは説明してくれてなかったのか社長と太宰さん。
ナオミちゃんにガクガク首を揺らされながらも返答する。
『え、っと…元々住んでたところに帰れることになって。あ、大丈夫ですよ、武装探偵社を辞めたりはしませんから!』
ポートマフィアの事なんか口が裂けても言えないので、中也さんの事などはまだ隠しているままだった。
「そ、うですか…よかったですわ、蝶さんが会いたかった人と会えたみたいで」
『うん、やっと会えたの……でも、これからも探偵社のためになれるよう頑張るから、よろしくね』
「はい!…で、ところでその反応からしてみると、会いたかった方というのは」
『あああー忘れてた、私太宰さんに用事があああ!』
もう逃げる、絶対逃げる、中也さん待たせてるしもう逃げる!
「あの唐変木ならまだ顔を出してないぞ?全くどこに行ったんだか…」
『太宰さんなら、多分そろそろ帰ってきてますよ!恐らく色々あったついでに数日間探偵社の仕事をサボろうって魂胆だと思うので。では!』
「な、んだと!?あ、待て白石!!」
急いで扉を作って国木田さんを放置して行った。
「逃げたな」
「逃げられましたわ」
『お、邪魔しま……す…ちょ、ええ!?』
「おっかえりー!そろそろ来てくれる頃だと思ってたよ!」
太宰さんの部屋にお邪魔すると、扉をこれまた天井近くに作っていたため、もちろん降りる形になる……のだが。
『は、離してください!分かってやってるでしょ太宰さん!』
「んー?それは、君が照れ屋さんなことかなぁ〜?」
彼は、あろう事か私をお姫様抱っこで受け止めたのだ。
放っておいて貰えたらちゃんと着地したのに。
『ちょ、何言ってっ…こ、これ渡しに来ただけですから!!』
手に持っていたお土産を見せると、渋々といった様子で下ろしてくれた。
「ほうほう、それは嬉しいねえ!どれどれ…おお、京都の蟹缶じゃあないか!それに……麻縄!!!」
麻縄を手にしてキラキラした目で喜ぶ太宰さん。
え、まって、私のお土産の蟹缶、麻縄に負けるの?
「蝶ちゃん、こんないいものを私に!?いいのかい!?」
『あ、それ中也さんからのお土産です』