第12章 夏の思い出
「実はこの祭、立原と広津さんも来てんだよ。入口付近でいてくれてっから、こいつは拠点に運んでてもらおう」
片手でメールを打ちながら、中也さんが言う。
しかしここで気になる事が一つ。
『?まだ帰らないんですか??』
「あ?当たり前だろ、なんで折角ここまでお前を連れてきてんのに、こんな形で帰らなくちゃならねえんだよ」
『で、でも浴衣穴空いちゃったし…血、滲んじゃってるし』
回るにしても、とても人前には出られない。
能力を使えば穴の復元はまあ出来るし、血を取り除く事だって不可能ではない…しかし、私の能力は物を消す事が出来るものというわけではないのだ。
『地面に血溜まりなんか作っても問題になっちゃうし、こんな変な血液調べられでもしたら、奇妙すぎて世界中で騒がれちゃうよ』
「…とりあえず穴だけまず塞げ。手作業ならともかく能力使えばいけんだろ?お前器用だし」
渋々といったように、浴衣の繊維を元に戻し始める。
すべて紡ぎ直して、元の配列に戻すのだ。
細胞の移植なんかよりは全然楽。
『塞ぎはしましたけど…かなりの量ですよ、この血。袋は毒が盛られた矢に使っちゃいましたし、今日中也さんも何も持ってきてな「ここに移せ」へ……っ?…正気ですか?』
思わず目を丸くした。
中也さんは私から少し離れて、両手を使ってそこに血液を移動させろと指示するのだ。
掌の上に、私の血を…?
「早くしろって、それ乾いちまったらまた厄介だろうが。とりあえず移してみろ、いい考えがある」
『いい考えって、そんなのどこにも垂らせな「いいから、急げ」…』
これまた渋々と、血液だけを中也さんの掌に移動させる。
空間操作系の能力にここまで慣れるのはまあ中々大変だったけれど、今となってはこれくらいの事、造作もない。
浴衣に染み込んだ血の三分の二程が中也さんの掌に移動して、まだ液体のままそこに溜められる。
水道かどこかで流すつもり?でも、それなら血が残ってしまう。
水道管で何か調べられでもすればアウトだ。
「結構出てんな…」
『…で、そこからどうするんです?いい事思いついたって言っても、浴衣に染み込ませたまま持ち帰って処分するのが一ば____ッ!!?ちょ、ちょっと中也さん!!?何して…っっ!!!』
中也さんは血の溜められた両手を自分の顔に近付けて……
「…ッは、……文句あっかよ」
飲んだ