第12章 夏の思い出
「うるせえ、能力バラさなかったのは堅実だったが…自分を守る時くらい咄嗟に普通使うもんだろ、莫迦が」
『相手が相手だったから…新しく来た三人の秘書さん達ね、黒だと睨んでるの。実際何でか分からないけどこうなってるし、まだ絶対にバラさない』
「……んで、なんでそんなキレてんだよ。珍しいじゃねえか、相手にここまでするなんて」
怖かった?と笑うと実はちょっとだけなと笑われた。
殺気に少しあてられてしまったらしい。
抑えていたとはいえ、あれに耐えてほぼなんともない中也さんはやはり流石だ。
カルマ君に早くに出てもらってて良かった。
『本当ならこの場で殺りたいくらいだったけど、流石にお祭りの場だからね。それにどう言ってもやっぱり情報は大事だし……つまんない相手。二回で気絶しちゃうなんて』
「ある意味えげつねぇのやってるな今回。本当にどうした?」
中也さんの目を見て、笑うも忘れてただただ言葉を紡いだ。
当然でしょう、当たり前じゃない。
そんな顔で、そんな声で本音が漏れる。
『中也さんの事を巻き込んだんだもの…決まってるでしょう』
「……そういう事かよ。気配に気付けなくて悪かった」
『引かないの?』
「引くかよ、寧ろ久しぶりにお前がああなったの見て、正直少しわくわくしてたくれぇだ…………かなり頑張って抑えてはいたんだろうが、こんくらい容赦なくやれる奴なんか滅多にいねえし」
どういう事、と中也さんに聞くと、要するにな…と言いながら頬に手を添えられる。
擽ったさに目をつぶると、サラリと髪に指を通された。
「純粋に、かっけえなって…綺麗だって思ったんだ」
『綺麗?やってる事はかなり酷いものなのに…職業病なんじゃないですか?』
「はっ、あり得るなそれ!でもお前は綺麗だよ、まっすぐで、殺す時にさえどこか気品を感じる…甘ったるいやり方は俺の性にあわねえからな。お前くらいに容赦なくやってくれる女の方が俺は好きだ」
何それ、と言えば、そこも含めてやっぱり好きだ、敵わねぇと困ったように笑われる。
職業病もいきすぎると本当に頭がおかしくなる。
こんなところで魅力なんか感じてどうするの……気品がある大人の人がタイプのくせに、そんなところで該当させてしまうなんて。
『マフィア脳』
「殺気にすら見惚れて余計惚れた」
『そこで褒めないで…もっとギュッてして』
「はいよ」