第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
個人のお土産を渡し終えると、早速プリンの箱を開けた社長。
なんだか可愛く思える。
そしてその箱の中身を見て疑問を持ったのか、谷崎さんが問いかけてきた。
「ねえ蝶ちゃん、なんでこのプリン、一個だけ多いの?事務員さんの分や蝶ちゃんが食べる分を合わせても、一つだけ多くない?」
すると、口々にそうだなと不思議に思う皆さん。
『私の分じゃないですよ!えっと、まず一つは、中島さんの分です』
「え、僕!?」
クスクスと笑いを零しながら説明する。
『入社祝いの一つということで、二つ食べちゃって下さい!私の初めての後輩君ですから!』
胸を張ってそう言うと、皆さん納得してくれた様子。
「そうすると、もう一個は?」
『もう一個の分は、あの…医務室で寝てる女の子の分です。目が覚めたら食べてもらいたいなって思って』
折角中島さんが連れてきたんだ。
_彼女は、私と境遇が似てるから。
「そうかい、蝶らしいねぇ」
国木田さんあたりにすごく反対されるだろうなと思っていたが、そんな事はなく、寧ろ微笑んでくれていた。
「ところで蝶さん、ナオミずっと気になってたのですが……その格好はどうされたのですか?」
突然問われたのは、今の私の服装だった。
『え、服!?へ、変かな、やっぱり変だったかな!?』
中也さんの見立ててくれた服だけど、やっぱりこんなにセンスのいい服、私には勿体なかったかなと心配になる。
「変?そんなことありませんわよ!ただ、あまりスカートも履かれませんし、何よりも今まで見てきた中で、こんなに蝶さんにぴったりな御洋服を見たのは初めてでしたので。…誰かからのプレゼントですの?」
『う、ん……その、す、好きな人から……です』
照れくさくて両手で頬を覆いながらそう言えば、凄い視線が国木田さん達から刺さる。
「…太宰から聞いている。幸せに暮らしなさい……寮の部屋は引き払わなくてもいい。何かあったらいつでも使ってくれて構わない」
『え、いいんですか!?』
社長は中也さんの事まで聞いていたのか。
そこももちろんびっくりなのだが、何よりも社員寮を引き払わないでいいだなんて。
「何かとその方が便利な事も有るだろう。年頃の娘なのだから」
私の肩をぽん、と軽く撫でて、プリンを持って社長室に戻っていく社長。
本当にお父さんみたいだなぁ。