第12章 夏の思い出
こぼれた声に、ビクッと肩を震わせたその人。
バッと三人揃ってこちらを向く。
「あ…」
「蝶、あんた来ちゃったの?」
イリーナ先生はキョトンとしてこちらを見る。
なんでソラさんがここに?
仕事服のスーツのまま来てるけど…私の暗殺でも企んでたのかしら。
カルマ君を後ろにしてから、ゆっくりとそっちに歩いていく。
『中也さん…ソラさんが、どうしたの?お仕事入っちゃった?それなら携帯に連絡して……』
「…こそこそ付いてきてやがったから理由を今聞き出そうとしてたところだ。で、そしたらこの女まで現れて、何かと思えば知り合いなんだとよ」
『!イリーナ先生の?』
「ええ、よく仕事を横取りしていっていたからね」
それはどうやら事実だったらしく、ソラさんは少しだけ悔しそうな顔を見せた。
「た、ただ単に日本の祭りに興味があって…仕事帰りに」
「それで蝶に目線飛ばしてやがった奴の何がただ単にだよ、怪しまれるようなことすんじゃねえっつの」
ソラさんが仰け反るような姿勢だったのを立て直そうとして、グラついた時だった。
「…っ!?キャ……ッ」
「うおっ、危ね『!!危ないっ!!!』は!?蝶!!?」
咄嗟にソラさんの支えに入ろうとした中也さんの背中に急いで回り込んで、押し退ける。
武器も何も持っていなかった、無防備な浴衣の日。
ソラさんを狙ったのか、中也さんを狙ったのか…
クロスボウのようなものから放たれたであろう、少し太さのある矢。
能力を使えばなんてこと無かった。
『い、ッッ……ぁ、う…っ、』
「蝶!!?あんた、それ!?」
「蝶ちゃん!!?」
何とか急所は避けたものの、腕に刺さってそれが脇腹まで刺さってる。
貫通してないから体質がバレない、そこはいい。
けど、血が止まらないし傷が塞げない。
ソラさんがいるから、下手に能力も使えない。
立っていられなくなってその場に倒れ込むと、クロスボウから矢を射ったであろう人物は既に気配を消して逃走。
『ハァ…ぁ、ッ……これ、は……っ』
「喋んじゃねえ!!とりあえずこいつをどうにか…!おいイリーナ!そいつ知り合いなんだろ、とりあえずここから別の場所に連れていっとけ。こっからの処置はマフィアの機密上教えられねえことになってっから」
「……行くわよ」
ソラさんまでもが青い顔をしていた。
矢…毒、塗られてる