第12章 夏の思い出
『勝負も結局引き分けだし…りんご飴美味しいし』
「なんでそんな食べんの早いかな…ぶどう飴は『いる』早っ」
『…!そういえばイリーナ先生とか来てないの?』
気分を変えようとカルマ君に問うと、ああ、来てるよと指をさし始める。
「確かちゃっかりテントに入ってただ酒食らって……あれ?さっきまでいたのに」
『え?』
キョロキョロと見渡してみるも、イリーナ先生は見当たらない。
どういう事だ、折角お酒をもらってたんならそこにいるはずだったでしょうに。
『イリーナ先生もいないのかぁ…久しぶりに会いたかったのになぁ』
「……まあでも、言うの遅れたけどおめでとう蝶ちゃん。上手く中也さんとはお付き合いできたんでしょ?」
『え?う、うん…ありがとう』
えへへ、と笑顔になるとカルマ君がそれで、と言葉を続けて携帯を見せる。
「このサイトすっげえ有名になってるんだけど…どうしたの?」
『……出たよ、親バカサイト…』
口角を引き攣らせながら、ケーキバイキングで起こった出来事を説明した。
『それで、会員番号一番はまさかの中也さん…お姉さん達いい人なんだけど、それで悪いことした犯人とか見つかって変に大きく騒がれてたみたい』
「意外、蝶ちゃんこういうのって照れてやめてとか言いそうだったのに…ていうか誕生日九月だったんだ、血液型とか知らなかった」
『ああ、まあ……割と慣れてる』
「なんでそこだけ慣れてるんだか…なんか蝶ちゃんってやっぱり大人っぽい時あるよね。経験の差ってこんなになるもんかなって思うくらいに」
カルマ君の言葉にはいつもドキリとさせられる。
流石にここまで予想されてるわけじゃあないとは思うのだけれど、そうであっても驚かなさそうというか…
『そうだね…私は特別人よりそういうのは多いと思うから。カルマ君にはまた機会があったらちゃんと教えるよ』
「え、別にそういうつもりで言ったんじゃ…」
『いいのいいの、この世に数少ない親友君に隠し事はしたくないですからね。ただ、頭おかしくなる話しちゃうかもだからその辺は覚悟を____』
言いかけた時だった。
大量に屋台で甘い物を買い込んで、屋台の奥の少し開けた人気の少ない所。
そこに、知ってる影が二つ……否、三つ。
中也さんと、何故かそこにイリーナ先生。
誰かを二人で囲うようにしてる。
『………ソラ、さん…?』