第12章 夏の思い出
「あ?なんだよ、お前スイッチ入ったらすぐに強請るようになっちまって……帰ってからじゃ『ダメ、今』マジか…すんませんって、許してくれな『…』蝶さん?」
顔を俯かせて黙りこくる。
中也さんが中途半端にキスなんてするから…もっとされたいって思うようになっちゃう私の身体は求めてるのに。
キス…ちゃんとしてくれないと嫌なのに。
『…ッ、ン……』
「「「!!!?」」」
「ン……っ、ハ、ちょっと待て蝶!?お前今は流石に………ッッ!!!」
中也さんの頬に手を添えて無理矢理こちらからキスをした。
唇が触れた瞬間に中で舌を出せば中也さんが飛びのきそうになったので、首元に腕を回して無理矢理続行。
でも、唇は開いてくれない。
『……っ、ぁ…へ……っ?』
すると何があったのだろうか、悪いと呟いて、スッと腕を剥がされた。
「ちょっとここで待ってろ。カルマ、蝶に付いててやってくれ」
「え、ちょっと中也さん?今のタイミングでそんな「いいから!!マフィアの方の事情だ!!」!」
頭を優しく撫でてから帰ったらちゃんとしてやるからと宥められ、絶対にカルマと一緒にいろよと言ってから中也さんは離れていく。
『……!ま、待って下さい!マフィアの方の事なら私がいた方が___』
「___お前はもう少し狙われてるって自覚を持て」
中也さんの悲痛そうな顔に、目を丸くしてえ、と声を漏らすしかなかった。
怒鳴るでも声を上げるでもなく、静かに言われた。
怪しい奴がいたって事?それなら、尚更中也さん一人じゃ危ないじゃない。
一緒にいないと、心配じゃない。
「ち、蝶ちゃん…中也さん走って行っちゃったけど……」
『…肝心なところでかっこつけるのあの人。負ける事は無いだろうけど……お店、回りながらいたらまた声かけよう?カルマ君一緒に付き合ってもらえる?』
ごめんね、と微笑むといいけど…と返される。
狙われてる自覚をって……中也さんは私の事を考えすぎなんだよ。
私が感情的になってて感じ取れなかった気配…気配か何かを察知して、あの人はそちらにかけて行ってしまったのだろう。
「ま、まあでも白石はあの盗聴器の件もあるしな…?」
「た、確かに!しかもさっきの中原さんかっこよ『何か?』う、ううん!なんでも!!」
『……何も無いといいけど』
うさぎのぬいぐるみを抱えてカルマ君と歩き始めた。