第12章 夏の思い出
中也さんの羽織で顔を隠しているとよしよしと羽織の上から頭を大きく、宥めるように撫でられる。
「知らなかったのか?てっきりあの担任が言いふらしてると思って……ああ蝶、そんな怒んなって。悪かったよ後でもうちょい可愛がってやっか『最っっ低!!!』いってぇ!!!?」
思いっきり中也さんの顎に頭突きをして、カルマ君の後ろに避難した。
背中から片目を覗かせ、盛大に中也さんを睨みつける。
「あーあー、純情な子はいじめすぎちゃダメなんだよ?中也さん」
『いや、そんな純情じゃないし』
「そうですよ!公開キスとかこれで何回目だと思ってるんですか!?」
『カエデちゃん、そこじゃない…』
少しずれた反論をしてくれる二人と、何も言えずに呆然となる他多数。
「い、いやだってこいつ……ッ、カルマに出会った瞬間に抱き着こうとするわ俺んとこにまだ来てねえくせしてぬいぐるみには抱き着くわ……」
「俺とぬいぐるみに嫉妬してどうすんの。蝶ちゃん恥ずかしがって怒っちゃってるよ?」
『で、デリカシー無い……っ、人前でとかされて…』
うんうん、と頷く皆。
首を振って賛同の色を見せてくれる。
しかし続きの一言で、ん?と首を傾げてその場に静寂が流れ始めることとなった。
『……ッ、恥ずかし、くて甘えられな…っ…』
「は……ちょっと中也さん、これどういうこと?蝶ちゃんに何仕込んだの」
「蝶ちゃん、中原さんに何されたの?何教えこまれたか相談していいよ」
「手前ら揃ってなんだよその目は!?」
「「「何調教したのかなって」」」
「んな言葉を蝶に聞かせてんじゃねえぞこの餓鬼共……っ!!?」
あああ!!とガシガシ頭をかく中也さん。
酷いじゃないですか…キスとかされたら、もっとずっとしてたくなっちゃうのに。
中也さんにいっぱいいっぱい甘えながらするのが、好きなのに。
『……人前でとか…一回だけで離れちゃうの……っ』
切なさが溢れて涙目になると、周りの全員がフリーズした。
「蝶…お、おい?お前もしかしてそれ…」
『してくれないの嫌い…っ、甘えさせてくれないのにする中也さんやだ!!』
「澪様ここで降臨ってか……っ!!ああああ俺が悪かった!!ほら、いくらでも甘えに来ていいからこっちに来____うぐ…ッッ」
中也さんにタックルするように抱き着いて強く強く抱きしめる。
『ちゅーは?』