第12章 夏の思い出
「ね、ねえ白石さん?さっきからいったいなんの勝負をしてるの?」
遂に潮田君がその質問をする。
皆してゴクリと喉を鳴らすのだけれど、大した事では無かったため、あっさりと暴露した。
『勝負で負けたら奢り禁止なの。中也さん、すぐになんでも奢ろうとするから』
「……え、それだけ?」
『うん、それだけ』
ね、と言うと悔しそうな顔をするものの、頭を数回撫でてから大量の景品が入って大きくなった袋をスッと取られた。
『ち、中也さん?そんな重いの私が…「お前はこっち」っ!…これさっきのぬいぐるみ!大っきいやつ!!』
ボフ、と顔にぶつけられた大きな大きな白いうさぎのぬいぐるみ。
思っていたよりも柔らかくて、思わず抱きついてムギュ、とした。
「第一重てぇもんだからこそお前が持ってんじゃねえよ…ったく。ありがたくいただいといてや『中也さんありがとう!!』……おう」
『こんなのもらったことない!千年くらい家宝にするね!』
「お前ならマジでやりかねねえなそれ」
だが、と無残なことにうさぎの顔を鷲掴みにして、中也さんはそれを持ち上げてしまう。
え、と見上げると中也さんは口角をピクピクさせながら言った。
「お前…抱きつく相手間違ってんじゃねえの」
『……デレ期?「うっせえ」家帰ってからね!』
だから返してと手を伸ばしてぬいぐるみをもらおうとすれば、分かったよと中也さんは腰を屈める。
そこで気が付いていればよかった。
『?は、早くぬいぐるみちょうだ…____ッ!!?』
「「「な……ッ!!?」」」
その瞬間、私はおろか、その場の全員に衝撃が走る。
『ン…っ、ンン!!…ん〜〜〜っっ!!!』
後頭部に手を添えて、思いっきり公開キスをされてしまった。
触れるだけのやつだけど、それにしても長い。
恥ずかしさは増す一方だし、そろそろ息だって持たなくなりそう。
顔を熱くさせて中也さんの襟元を震える手でキュ、と掴んでしがみついていると、ゆっくり唇が離されて抱き寄せられた。
『ハ……、ッぁ、な、んで…っ〜〜~!!!』
「んな恥ずかしがんなって。まあそこが良いんだが…」
視線が刺さる。
嘘でしょ、なんで皆の前でキスとか…いやちょくちょくしてたけど。
ギュウッと中也さんにしがみつきながら呼吸を整える。
「今のは…」
「キス!?え、マジでゴールイン!!?」