第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
もしも本当にそうなんだとしたら。
与謝野先生の言う通りなのだとしたら…
「あーあー、ありゃどう見ても恋する乙女の表情だねぇ」
「恋!!?白石が、恋だと!?」
中也さんとほぼ年の変わらない国木田さんが言葉に詰まってた。
そのくらいの“大人の人”が、与謝野先生の言葉を肯定するような反応を見せてくれたという事は…
中也さんにも、意識してもらえるかもしれない?
「蝶ちゃんが恋だって!?」
「あら、知らなかったんですの?お兄様」
『ぁ、その…大人の人でも、私の事……女性として意識してもらえ、ます…か?』
与謝野先生の隣でフリーズしている国木田さんに質問してみると、また慌てだした国木田さん。
「お、俺に聞くのか!?そのような事を俺に聞くな!!…というかまて、大人の人でもって!」
あ、やっちゃった。
国木田さんの過保護センサー働いちゃうかも。
「はいはい、そこまで。まあ女性陣は知ってた事だけど、蝶はずっと片想いしてんのさ」
「今22歳の方でしたよね?何年も想い続けてるだなんて、本当に健気で可愛らしいですわ!」
『ちょ、二人共っ………女性として見てもらえたらなぁとは思うけど』
その刹那、国木田さんの眼鏡にピシッとヒビが入り、谷崎さんと気絶していた筈の中島さんからは、生気が感じ取れなくなった。
「大人の人…蝶ちゃん、交際する前に、ちゃんとここに連れてくるんだよその人っ」
「危険な人について行っちゃダメだからね!?」
「付き合う前に連れてくるんだ、分かったな!!」
なんて結婚前の挨拶のようなものをする父親のように…はたまたシスコンのお兄ちゃんのようにして息巻く三人。
この状況を打開すべく、本来の目的であるお土産の話に話題を逸らす。
『あ、そうそう、修学旅行のお土産持ってきたんですよ!どうぞ!』
先程買ってきたプリンを私の仕事机に置いて、皆に見えるようにする。
そして、次に個人のお土産。
国木田さんには和柄の万年筆、中島さんにはお茶漬けギフト、谷崎さんとナオミちゃんには抹茶のバームクーヘン。
賢治君にはリクエストがあったのでお漬物、乱歩さんには和菓子。
そして与謝野先生には簪、社長には湯呑みと急須。
まだ帰ってきていないのか太宰さんの姿は見えないため、太宰さんはまたの機会になりそう。
渡し終えると、皆喜んでくれたようで嬉しかった。