第12章 夏の思い出
中也さんとの電話を切って、クル、と太宰さんの方を向く。
「……聞くまでもなかったけど、どうだった?」
『い、一緒に行くって…!』
「だと思ったよ、あいつの事だし事前に調べてた可能性もあるだろう」
流石は元相棒、そんなところまでお見通し……ていうかそこまで予測してて私に電話しろって言ったのかなこの人は。
なんかこういうところ見てると本当にカルマ君と重なるなぁ…あれ、てことはカルマ君もお兄ちゃんポジション?
一瞬考えてすぐにやめた。
うん、やっぱりそこは織田作さんだね。
太宰さんの本業はお母さんだ、お母さん…中也さんと被るとか夫婦になるとかいうのは知らないふりだ、押し切る。
『ありがとう太宰さん、お土産何かいります?麻縄とか〆縄とか…あ、タコ糸とか「蝶ちゃん、もしかして修学旅行の時の根に持ってる?」……え?嫌なんです?』
「スルーしたよこの子、お兄ちゃん悲し…じゃなくて、うん。いいよお土産なんて。後蟹缶美味しかったから、いやほんとに」
あの縄は結局どうしたんだい?と話題が逸らされたため、家ですけどと返せばブッ、と吹き出された。
「ち、蝶ちゃん…家って『部屋にありますよ、何か使えるかもしれないですし、中也さんが買ったものですし』絵面がやば……ン゛ンッ、」
『絵面……?』
「……蝶ちゃん、突然だけれど、中也の性癖なんかは知っているのかい?」
『へ?……っ!?い、いきなりなんて事を…ッ、とりあえず私が恥ずかしがってるのが好き……らしい、ですけど』
ゴニョゴニョと紡ぐと、まあそうだねぇ…と考え始める太宰さん。
顎に手を置いて、言わない方がいいのかもしれないのだけれどと話し始める。
「君、あんまり中也に可愛いことはしすぎない方がいいよ。あいつは生粋のマフィアだからね…流石に蝶ちゃん相手にそんな事はしないだろうけれど、少々人より特殊なところを好むだろう」
『特殊なところ…?』
「ああ…うん、とりあえず下手に煽らないこと。あいつの我慢が続いてるところで続かせないと、多分本当に蝶ちゃん持たなくなっちゃうから」
持たなくなると言われてどういう事だと少し顔を顰める。
中也さんが生粋のマフィア気質な人だなんてこと知ってる。
でも私に乱暴するのは嫌いだし、暴力的な事なんてしない…というか出来ないはず。
「……あいつは従順にさせるのが大好きだからねえ」