第12章 夏の思い出
「ああ、そうだったんだが…もう一つ依頼しても大丈夫か?」
『?大丈夫ですけど、そんなにまた手こずるようなものが?』
太宰さんも興味深そうにこちらに顔を向ける。
「手こずるというか…妙な案件でな。何やらこの横浜で、最近変な声が聞こえて不気味だという話が多くくるんだ」
『妙な声…ですか』
「何やら、皆口を揃えて同じ声を聞くらしい。気配を感じて振り向くと風と共にいなくなってしまうとかで…確か声……というより鳴き声は、“ヌルフフフ”と聞こえ____」
『____あ、はい、すみません。すぐに捕まえて注意して、二度とご迷惑がかからないようにしておきますね』
突然笑顔になった私を見ながら、箕浦さんはもう見当がついたのか?と感心する。
『見当…まあ、そういう口癖の人を知ってますんで多分その人かと。怪しい人でも悪い人でもないんで言っておきますね。しかも多分それ私に用事があって来てるだけでしょうから』
「!君の知り合いなら安心だな、よろしく頼む…えらく変わった口癖な気はするが」
続けられた箕浦さんの言葉にギクリとしそうになった。
危ない、ここで下手なリアクションをするとすぐに殺せんせーの事を問い詰められてしまう。
ていうかなんでまだ横浜来てるのあの先生、大人しくしててよ国家機密なんだから。
『すっごい変わった人なんで、あはは……じゃ、じゃあ資料を見ながら何か分かり次第連絡させていただきますね!ご依頼ありがとうございます!』
「いや、こちらこそ。よろしく頼む、何かこちらにも出来そうな事があれば言ってくれ。君はそろそろうちじゃあ顔パスで通れるだろうからな」
『言い過ぎですってそれは。ではまた!』
ほぼ無理矢理話を切って箕浦さんと別れ、太宰さんと二人に戻る。
どっと疲れた、物凄く疲れた。
いや本当何してんのあの人……人?
うん、次に会ったら絶対触手五本は飛ば___
「や、やっと会えました白石さん…!!!」
「あれ?いつの間に来られたんです?お久しぶりですねえ!!」
『……殺せんせー、五から十の間で好きな数字をお答えください』
突然の質問に殺せんせーはえ、何事ですか?と言いつつ、縁起がいいので八にしましょうかねぇ!と言い放った。
その瞬間にブチュッと音が鳴り響き、殺せんせーの触手が同時に八本破壊される。
「ニュ…ニュヤアアア!!!!?」