第12章 夏の思い出
パソコンを弄り始めて数分後。
一つ、手持ちの材料だけでいいものが出来た。
「今度は…ん?それはなんだい?」
『太宰さんでも分かりませんか?ならよかった……まあ、愛のレーダ「隠しカメラかい?」言わせてくださいよ』
「それを執務室に仕掛けて何かあったら行く、と?」
『……どっちかっていうと、何かあったらその証拠を残しておこうと。万が一でも手を出されるようなことがあれば…』
その時は、私が出るつもりだから。
最後まで言わなくとも、太宰さんは私の思ってる事を分かってる。
本来なら探偵社の指針に反する事だから、馬鹿な事はやめろだとかそんな事をしてはいけないだとか言われるはずなのに…意外。
「蝶ちゃん、出るのはいいけれど…一人じゃ心配だから、やはり立原君や広津さんと一緒に行くんだよ。これだけは守っくれ」
『!……心配する要素、あります?まあそれくらいなら…約束します』
「うん、お願いね。君とあいつとの事は、傍から見てきた人間の中では一番に理解をしているつもりだ…だから止めはしないし、止められないことも分かってる。ただ、周りが心配する気持ちも受け止めてやってくれ」
『皆して親バカですもんね、本当。太宰さんか中也さんから伝染していってるんですよ絶対』
違いないねとクスクス笑われる。
自覚あるんだこの人。
「まあいい方向に素直になってくれてよかったよ、あいつのせいだってのが唯一最大に気に食わないけれど」
『中也さん容赦無いからなぁ…』
苦笑いで返していれば、私の携帯に着信が入る。
時間的にも予想はまあついていたのだけれど、箕浦さんからのものだった。
『もしもし、白石です』
「箕浦だ。遅れてすまないな、資料を持ってビルまで来たんだが…」
『わざわざすみません、探偵社の方ではもう話も通ってるんでどうぞ!』
「ああ、じゃあ失礼する」
電話を切ると太宰さんから、ああ、今日の分ねと納得の声が上がる。
箕浦さんもすっかりうちの常連だ、乱歩さんが殺人事件を解決する前に私個人で何回か依頼を受けた事はあったのだけれど。
事務所の扉にノックが響いたため、どうぞと返すと箕浦さんが入ってくる。
「すまないな、こんな夏休み最終日なんて日に」
『いえいえ、刑事さん達も忙しいでしょうし…で、依頼内容は爆破予告の犯人の確保と爆弾の解除…でしたっけ?』