第12章 夏の思い出
二代目の死神の動きや新しい三人の秘書さん達の動きは特に見られることはなく、中也さんが夏休みを取っていたせいかなんなのか、平和に夏休みを過ごしていた。
宣言通りに中也さんは、私がしてみたいと思っていたもの全てを回りきるため、私が休みの日に色々と連れ出してくれ…ってなんか私何もしてないみたいで物凄く申し訳なかったな。
楽しく幸せに何事もなく過ごしてきて、迎えた八月三十一日…夏休み最終日。
仕事で軍警の方から依頼が入っているため、私はそろそろ家を出なければならないのだが。
「……蝶、お前今日は何時に戻ってくる?」
『仕事を片付ける時間にもよりますかね…どうしたんです?』
何やら浮かない顔をした中也さん。
「いやほら、お前結局仕事が重なってて祭りの類には行けてなかったろ?だから今日は『ああ、気にしなくても大丈夫ですよ!それでなくとも今年は本当に楽しかったですし』?いや、そうじゃなくてだな」
『そんな事気にせずにいてくださいって、頑張って早めに片付けてきますから!』
「いや、だからお前……あー、まあいい。そうだな、能力使わねえんだから無理は言いたくねえが、出来るだけ早く戻ってこい。出来れば夕方頃には帰ってきてもらえてた方がいい」
中也さんの勢いはいつもより大人しくて、親バカ発言かと思いきやなにやら少し違うらしい。
首を傾げて見ていると、これまたいつもと違って早く行け!と何故か恥ずかしがられた。
『は、はぁ…じゃ、行ってきますね?』
「おう、早く帰ってこいよ、分かったな」
分かりましたって、と残して家を出て、外に待機していた立原と合流する。
この人もこの人で仕事人間だよなぁ、結局わたしが探偵社に行く時はこうして律儀に待機してるし。
『おはよう立原、今日も元気に社畜してるね』
「おは……って何だそれ!?元気に社畜とかてめえなあ!!」
『え、違うの?』
ぐっ、と押し黙る立原にクスクスと笑ってから、嘘嘘冗談、と歩き始める。
『律儀にご出勤ご苦労さま、いつもありがとうね』
「お?…は!?何お前気持ち悪!!」
『え、立原酷くない?一回デコピンしていい?』
「いや、だって…はあ!?なんで今日そんな素直なんだよお前!?調子狂うだろが!!」
それを言われて頭の中に思い浮かんだものはただ一つ。
『中也さんの教育の賜物だね』
「何されたんだよお前…」