第11章 縁というもの
ひんやり…というか本格的に冷たいスプーンが口の中に入れられた。
そしてそこに乗せられていた冷たくなった蜂蜜を少しずつ舐める。
……美味しいけどなんか複雑。
「よしよし、そのまんまもうちょい大人しく舐めてろよ…ああ、ゴム外しておくか」
何やら今度はスプーンを持ったまま、片手でゴムを外す中也さん。
髪が解かれてサラッと降り、疑問に思って中也さんの方を少し見上げれば、少し大きな声で突然そのまま止まれと言われた。
どういう事かと頭に疑問符を思い浮かべつつ小首を傾げたまま見上げ続けると、どこから取り出したのか携帯を手に持って、シャッター音がリビングにパシャリと鳴り響かせられる。
……ん?
「もういいぞ。偉かったな、明日プリン買ってきててやろう」
『ぷ、プリン…!!じゃないっ、さっき何したの!?「あ?写真撮った」なんて事してるんですか、趣味悪いですよ中也さん!!?』
「仕方ねえだろ、すっげえ可愛かったんだから。待受にしとくわ」
『お願いだからやめてぇ……!!!!』
中也さんが相手だったから油断してた。
太宰さんあたりなら端末を壊して終わりだけれど、この人の異能は厄介すぎて私でも手に負えないし…何より中也さんの私物とか私にはとても壊せないし。
「あーこれで毎日癒されるわ」
『有り得ない…信じらんない、なんで私の写真とか』
「考えてみりゃ自分で撮ったこと無かったなと思ってよ。トウェインの野郎から送り付けられたドレスシリーズと猫耳と、あとはサイトに掲載されてる街中での目撃写真くれえだし」
『え、何、あの親バカサイト怖い』
恐るべし中也さんウイルス…着々と伝染していってる。
スプーンを置いて、また氷が差し出されたためそれをまた舐める。
「こんな写真誰も持ってねえし撮ることも出来ねえだろうからな。俺の特権」
『何故か変態臭を感じるのは私だけでしょうかこれは』
「お前相手ならそれくらいにまでなれる自信はある」
ここ最近は開き直り始めているせいか、これすら効かなくなってきた。
ダメだ、その内中也さんの方からストーカーとかされそ…いやそれはまあいいか。
寧ろウェルカム、中也さんウェルカム。
『…他の人に渡したりしないでよ、写真。恥ずかしいから』
「誰が渡すかよ、なんならお前がどこにも行けねえようこのまま家に監禁しても『マフィア脳反対』冗談だっつの」