第11章 縁というもの
『も、もういい!!もういいですから返して下さいっ!』
「いい具合になるまで冷ましてやっから待って『恥ずかしいから早く返して!!!』…まだ飲むなよ」
涙目で睨みつけるように言い切ったらテーブルに置いて返してくれた。
いい歳して人にしてもらうとか…それに中也さんにされるとか何、心臓持たない本当に。
『熱さとか気にして中也さんがしなくていい…っ、だいたい蜂蜜がちょっと冷たいんだから、混ぜたらこういうのはちょっとマシになりますし、飲みながら冷ましてゆっくり____ッ!』
蜂蜜と砂糖を混ぜてから少し飲もうと口に含んだ瞬間に、熱すぎて肩を跳ねさせた。
プルプルと手を震わせながらコト、とテーブルにマグカップを置き、再びゆっくりと中也さんに腕を回して抱きついて顔を埋める。
「……蝶?お前もしかして…」
『…………火傷した』
「莫迦か!!だから言ったのに何してんだよお前は!!?」
舌の火傷ごときでと言うと言い方はあれなのだけれど、それだけで慌てふためく中也さん。
悔しい、物凄く悔しい、なんで耐えられなかった私の舌。
「口開けてちょっと舌出せ!…口から出せっつってんだよ、恥ずかしがってんじゃねえここで!!」
控えめに出すと中也さんはテーブルの上に置かれていた砂糖入れの中から角砂糖を一つ手に取って、私の舌先にそれを乗せる。
『…ッ、?』
「そんでその砂糖落とさねえように上顎と挟んで…そう、そのまま溶けるまでじっとしてろ」
これ借りんぞ、と中也さんは私のマグカップに入っていたスプーンを手に取って、それを拭いてからトロリと瓶の中に入っている蜂蜜を掬う。
蜂蜜を乗せたままのスプーンをそのまま器用に小皿に置いて、今度はどうするのかと思いきや冷蔵庫をあさり始めた。
舌に乗せていた砂糖もじんわりと溶けていって、甘みが口の中に広がっていく。
そしてそれが溶けきってなくなったころ、中也さんはもう一回口を開けろと私に言う。
少し痛みがマシになったような気がしつつ指示に従うと、今度入ってきたのは
『……ッ!?』
「氷だ。冷やしてろ」
突然の冷たさに驚きはしたものの、いうことを聞いて大人しく舐める。
舌の火傷にどれだけ手かけるのよこの人は。
大きめの氷を一つ舐め終えた頃。
「…冷やした蜂蜜舐めたい奴は『は、はい!!』早ぇよ」
餌付けタイムが始まりました。