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第11章 縁というもの


翌日、昼下がりのこと。
探偵社の事務所の入ったビルの一階にある喫茶店、うずまきにて皆とお茶をしていた。

私はまあお茶なのだけれど、まあ私以外はしんどいから、やる気が出ないから、といった様子で…

「燃え尽き症候群だね」

喫茶店のソファーで、ダレている。

国木田さんは組合との抗争の後、更に仕事に熱を注いでいるようで、ここに皆が集まっていることに口を挟みすらしていなかった。

『燃え尽き症候群って、今日は自殺はしないんですね太宰さん』

「蝶ちゃんの方こそ…今日は中也からのお弁当も無ければ作ってきてるわけでもなさそうじゃないか」

『中也さんの分だけ作ってきましたよちゃんと。脚も完治しましたし…………はぁ、どうしよ』

私のどうしよう、といった呟きにピクリと耳を動かす皆。
ゆっくりと全員に顔を向けられ、昨日一晩考えていた悩みが頭を埋め尽くす。

太宰さんが中也さんの名前を出すから思い出しちゃったじゃない、本当にどうしよう。

「…蝶、あんたどうしたんだよ?そんな複雑そうな顔して」

「蝶ちゃん、僕はあえて何も言わないから言ってごらん?僕は何も言わないから」

乱歩さんに二回繰り返され、これは嘘だと言ってくれと暗に言ってるなと確信する。
ていうか乱歩さんどこまで見抜けるのこの人、本当に…

『…………け、結婚指輪のお返しって…どういうのがいいのかなぁって』

「「「「「は…っ?」」」」」

みんなして一斉に目を点にして聞き返した。
乱歩さん一人が何故だか頭を抱えている。

『ほら、やっぱりお返しはいるよなあって…でも何あげたらいいか分からないですし、そもそもあの人の方が使ってるはずなのに私より貯金多いかもだし「待て待て待て待て」…与謝野先生?』

「何不思議そうな顔してんだい、結婚指輪だって?誰の…ああ、やっぱりいい。やっぱりいいけど結婚指輪!?なんで今結婚指輪!?」

『プロポーズされたけど形にしておいた方が私が嫉妬しなくて済むからって』

「あんの帽子置き場、蝶ちゃんのためとはいえなんて手段を…っ、姑息な!!!」

『行方くらますついでに人の車に爆弾仕掛けた人が何言ってんですか』

定番は腕時計…らしいけどあの人気に入ってそうなの持ってるし。
ネクタイピンとか、そもそもあの人クロスタイだし。
好きなものとか……お酒なんて山ほど持ってるし。

『はぁ……悩む』
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