第11章 縁というもの
指を絡めて手を繋ぐだなんてこれで二回目だ。
今までこんな繋ぎ方、外でしたことなんてない。
今回は恋人みたい、なんかじゃない……そうだ、この人は恋人だ。
だから私とこういう手の繋ぎ方をしていてもなんら問題は無いはずで……
『…………な、にこれ…っ、…』
「何って、恋人繋ぎ?」
『知ってるけど…なんでいきなり……』
「お前が気にしてる部分は俺に責任があるからな。それらしい配慮がお前にも周りにも足りてねえからこういう事になるし、言い寄ろうだなんて馬鹿な事考える奴もいるんだろ」
地面に片膝をついて私の右手の指に軽くキスを落とし、もう一度私の頭を撫で始める。
道路でなんてことしてんのよこの人…
『ち、中也さんのせいじゃないでしょう?ごめんなさい考えさせちゃって、私が原因なんだから早く立って「いや、お前は何も悪くねえ」悪くないって…』
「不安にさせてたのも嫉妬させたのも、んなもん男が悪ぃんだよ……俺もこういう経験がねえから、もうちょっとちゃんと意識する。結婚の申し込みまでしてんだ…今度は本物のシルバーリング、買ってやるよ」
『え…』
心臓の鼓動が速くなる。
し、シルバーリング…本物って、そういう事?
中也さんも、付けるって事…?
「まあ、流石にまだ付けるだけだしちゃんとお前が大人んなってからし直すけどな…ああ、お前は首から下げてろよ?学校行って左手に付けてたらお前の事話さなくちゃならなくなっから」
『は…え、本物……って、じゃあこれの代わりは…っ?』
「チョーカーがあんだろうが」
『よ、用意周到…でもこれも大事だから、持ち歩いとく』
一周回って冷静になった。
本物の…シルバーリング。
まさかそんなことになるだなんて思ってもみなかった。
私が昔、冗談で言っただけだったシルバーリング。
……本物に、なる。
中也さんも、付ける。
「おう、ありがとよ……ってなんだァ?その顔…まだびっくりしてんのかよ」
『だ、だって…中也さんと、一緒?』
「一緒だ。これでキスマークなんか付けなくても、いらねえ虫は寄ってこねえようになるさ。まあ手はこれから繋いでいくつもりだけどな?」
甘えたがりなお前からすりゃあ文句はねえだろ
中也さんは言いながら、またあのずるい笑顔で私を見る。
この人の発想と行動力には驚かされてばっかりだ。
……デリカシーないくせに。