第11章 縁というもの
「ち、蝶ちゃんの事情を考えるとまあ、結婚……も納得することにするとしよう。でもお返しって??」
『指輪買ってくれるって言われて、それならやっぱり何かお返しがいるんじゃないかって……ここの国にもそういう伝統がないこともないみたいですし、あの人絶対凝ったの買ってくるし』
「指輪にお返しなんてあったんだ、初めて知った…」
「敦も谷崎もまだ子供だねぇ、やっぱりその変、蝶は大人ってことだろうよ」
与謝野先生の声に少し照れくさくなりつつも、何度考えても思い浮かばない中也さんへのお返しに気を重くする。
どうすればいい、あとあの人が好きなものなんて喧嘩と音楽くらいでしょ。
喧嘩なんて死んでもあげちゃダメだし…相手が可哀想だし。
音楽…はどっちかっていうとこっそり鼻歌歌ってる人だもんなぁ……趣味が全滅、どうすればいいのこれ。
「あんな蛞蝓、帽子でもあげておけばすぐに大人しくなるんじゃないのかい?」
『数日前にプレゼントしたばっかりなんです、誕生日祝いも含めて』
「「「あらら…」」」
『ああ、ダメだ、男の人って全然分かんない……中也さんが一番好きで確実に喜んでもらえるものって何…?』
机に突っ伏しながらカラカラとアイスティーの氷を鳴らし、溜息を吐きながら考える。
帽子用のチェーンもあれしかいらないだろうし、チョーカーだってつけてるし、お菓子なんてほぼ毎日作ってるし。
「あの素敵帽子君が一番喜ぶのなんてまあ分かりやすいものだけど……そうだねえ。お酒のあての方は?」
『あ、成程、あての方は考えてなかっ…ダメだ、あの人私の前でお酒絶対飲んでくれない』
「じゃあもう駄菓子でいいじゃん」
『それ乱歩さんが欲しいだけですよね』
どうしよう、まとまるどころかどんどん迷走していってる。
他に何か…お仕事とかでも使ってもらえそうなやつ……
『身近な仕事人といえばやっぱり国木田さんか…………いや、拳銃はダメだよなぁ、ていうかあの人銃いらないし』
「蝶ちゃん!?物騒なものダメだからね!?絶対ダメだからね!!?」
『いや、お仕事で使えてある程度割に合うようなものを渡したくて…あれ、国木田さん…国木田さん………あ、』
思い付いたという顔をした私に、皆が顔を向ける。
一つ、無難なものを思い付いた。
これなら危険じゃないし、ある程度高価なものが送れるはずだ。
『万年筆!』