第11章 縁というもの
「ほら、もうそんないじけてんなって。プリン要らねえのかよ」
『……いります』
「可愛い」
『拗ねてても素直でも結局そう言うんじゃないですか……ッ!!』
ぱくぱくとプリンを食べ漁る。
やけ食いだやけ食い、今日は多めに在庫があったみたいでよかった。
結局恥ずかしくなりすぎて、中也さんと二人での喫茶店。
夜ご飯の前だなんて気にしない、ハニートースト三つ食べた後だとか知らない。
「今日は蝶ちゃんよく食べるわねぇ、ご立腹…というより、何か嬉しい事でもあったのかしら?」
『ンンッ!!?っ、ケホッ、ケホッ…っ!!』
奥さんからのまさかの突っ込みに、プリンが変な所に入った。
す、鋭い…これが本物の大人の人か。
「ははっ、うちの蝶はまだまだ乙女なもんですから」
「あら?……あらら、もしかして?」
「……ほう。遂にですか…昨日の様子からしてみてもしかしてとは思ってましたが」
察しの良すぎるこの夫婦。
私と中也さんの関係性が少し進展したのだと、暴露される間もなく気付かれた。
そりゃあ小さい頃から見られてるしそうなるか。
「まあ色々あってな…なあ?蝶」
『……ッ、今日の中也さん嫌いっ…!!』
「蝶ちゃん、こんなに一途ないい人他にいないわよ?ずっと想ってたんだしよかったじゃない、おめでとう」
「まるで自分の子供の成長を見てるような気分だな。中也君は誰が見てもいい人だと思うぞ、男から見てもそう思う」
『そうですよ!?なのにこうやってずっとからかってく…る、から……ッッ!!!』
思わずそうだと言ってしまった。
ニヤリとする中也さんと、微笑ましく頬を緩ませる二人。
なんで私の周りってこんな親バカばっかりなの!?
「蝶も同じくらいには俺に一途だもんなぁ?」
『…っ、ご、ごちそうさまです……!!』
「あ?…お前、まだ二十個も食ってねえじゃねえか。どうしたんだよ」
『もういいの、お腹いっぱい!!!』
クスクスと笑う夫婦。
中也さんもクス、と笑ってから、お金を払ってお店から出ていった。
「蝶、本音言ってみろよお前?腹がいっぱいなわけねえだろ?あの蝶さんがよ」
『いっぱい「嘘つけ」……だって…』
中也さんにまたギュ、と腕を回してくっついた。
「やっぱり来た…スイッチ入ったんだろ」
そしてやはり見抜かれる。
「俺んとこに来たかったんだよなぁ?」