第11章 縁というもの
広津さんが執務室に連れてこられ、私の護衛の増援という事にすぐに快く了承して下さった。
安心半分、罪悪感が半分…
首領から死神の名前を口にされた時は流石に驚いていたようだったけれど、それでも私についていて下さるらしい。
今度何か三人にお礼しなきゃ。
「あ、あの…すみません首領。その死神というのは……?」
「ん?…ああ、立原君はどちらかというと遊撃部隊の戦闘員だったもんね。死神とは、まあ……世界最高峰の殺し屋の事だよ」
「!……そんな、奴が…蝶を?」
『正確に言うとその弟子だから。本人が相手なら正直怖気づいてたとこだけど、そうじゃないなら話は別…何かあったところで負けないわよ』
それより立原達の方が心配、怖くないの?と聞き返すと、お前を一人にしておく方がよっぽど怖ぇと返された。
中也さん病でも移っちゃったかな。
『大丈夫、二人に何かされても絶対守るから……ていうか相手は探偵社の方の回復術を知ってるみたいだからね。多分狙うなら私個人…だけど、どういう足止めをしてくるか分からないから、その時はよろしくお願いします』
「蝶ちゃん、君も無理は『分かってますって、今回も自分だけじゃなくて色んな人と情報を集めてますし』……ならいいんだけど」
ではそういう事で、と踵を返して退室しようとすると、ちょっと待ってと首領に呼び止められる。
何かと思えば、中也さんにここに来るよう連絡を入れて欲しいとの事。
『中也さん?…なんで、ここで中也さん?』
「あれ、中原君から聞いてないかい?夏休みの話」
『夏休……!………夏休み…っ、首領、ありがとうございます本当にっ!まさかこんなにいい夏になるなんて…』
どういたしまして、でもまだ早いよ?と微笑まれて、私の頭の中は楽しみな事でいっぱいになった。
中也さんとの夏休み…中也さんと、いっぱいいっぱいしたかった事をする。
私の憧れていた普通の楽しみを、普通の人達の幸せを。
こんなに幸せな事って無い。
こんなに素敵な事って、無い。
「こうでもしないと蝶ちゃん、中原君に遠慮しちゃうだろうからね。女の子…というか恋人の特権なんだから、もっとわがまま言っていかなくちゃいけないよ?」
『わがままは割と言ってるような気が』
「お前のとか全然可愛らしいもんだから、マジでもっと言っていいと思うぞ」
『た、立原まで変な事言わないでよ』