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第11章 縁というもの


「お前、明日…つうか今日、時間ある時にこっち来い。首領にお前が休みの日を伝えて、それに合わせて休みもらうようになってっから」

『え、休みの日って…非番の日?』

「そうだ。途切れ途切れになってもいいから確認しておいてくれ。今年はお前がしてえ事、めいいっぱいすればいい」

『!……はぁい…』

中也さんの胸に顔を埋める。
ずるいなあ、交際云々なんて関係なしでも、私の事こんなに考えてくれちゃうの。

父性愛なのかなんなのか、とにかく私にこんなにも尽くしてくれる人…こんな人に出逢えるだなんて。

「今日はよく甘えにくんな…そんなに嬉しい事でもあったかよ」

『…中也さんが、一緒にいてくれるの』

「ほお?俺はいつでも一緒にいてやるが?」

『……プロポーズ』

ボソッと言えば、うりうりと頭を大きく撫でられる。

「お前と一緒にいるんなら、地獄の果てでも天国みてえなもんさ」

『言い過ぎ…』

「そんくらい嬉しいんだよ、分かれ」

『無理、中也さんしつこすぎ』

お前にだけだよ、と呟かれて、次第に瞼が降りてきた。
そっか、もう夜明け前…中也さん、よくこんなに起きてられるなぁ……





「幹部!甘いものを!」

「いらねえ、悪い」

「では珈琲でも」

「自分で淹れる、いい」

プロポーズを受けた翌日…というか夜。
言われた通りにやってきた、中也さんの執務室の前。

「……蝶、そんなに気になるんなら入ればいいんじゃ…」

『ねえ、もしかしてこれってずっとこの調子なの?立原さあ、知ってる?女の嫉妬って怖いのよ』

「人にあんなあしらい方してる中原さん初めてだぞ俺!?許してやれよ!!?今何があんのかは知らねえけど!!」

聞こえる声に嫌気がさす。
とりあえず中也さんは無事、そこは良しとしよう。

しかしそれにしても何だ、甘いものとか珈琲とか…

『秘書じゃなくって妻の仕事…!!!』

「ヒッ!!?た、助けて中原さん…俺もうこいつ恐ろしい……っ」

私の耳が良いからか経験からか、執務室の中の声が聴こえてしまう。
この調子…あの中也さんがこうもバッサリ扱うだなんて、相当言い寄られていたに違いない。

『……ねえ、乗り込む?乗り込んでいい?ついでに言うと殺していい?』

「乗り込むまでにとどめておけよ!!?」

立原の返答を聞いてから、扉に手をかけた瞬間だった。

__バキッ
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