第11章 縁というもの

『ち、中也さんｯ…びっくりするからいきなりかけないで……っ』

｢悪い、わざとだ｣

『わざとって…』

中也さんの方を向こうにも恥ずかしくて見れないし、鏡が湿気でくもってくれてなかったら目も開けていられなかった。

手際よく石鹸を泡立てられたのか、中也さんの作業が止まる。

｢んじゃあ今度はびっくりさせねえように言ってやらねえとな。お背中お流ししまっせ、姫さん｣

『い、一々そういう言い方いらないから……ｯ、ぁ…っ、ち、中也さん、なんか優しくないですか…っ？』

｢あ？お前の身体を強く擦るわけにもいかねえだろ。なんだよ、痛くされてえのか？｣

首をﾌﾙﾌﾙと横に振ってそのまま黙り込んだ。
背中、弱いんだっけ私。
いつも自分で洗う時よりも変に優しくされるから、そういう感覚じゃないはずなのに反応してしまう。

どっちの意味で気持ちいいの、これ。
中也さんに洗ってもらってて心地いいから気持ちいいのか、単にそれに感じちゃって気持ちいいのか…もう、よく分かんないよ。

なんでこんな触れ方するの、なんで私の事気持ちよくするの……なんで、こんな風に考えちゃうの。

思っていた時だった。

『…ｯ、ちょっ……ダメっ！そっち前…ｯぁ…っ、背中じゃない…ｯｯ』

中也さんの手が突然脇腹に動いてきて、そこからお腹の方に回ってくる。
それが少し上の方に上がってきて、タオルの下で中也さんが私の身体に触れる。

｢折角だから洗ってやろうと思ってな｣

『そんなサービスいらない…ｯ、んん…っ』

最終的に私が抵抗しないのをいいことに、腕や脚まで洗われた。
変に優しくするから…恥ずかしい事、するから……

身体がドキドキして火照ってくる。
石鹸を流されて、前を見られているわけじゃないのに…中也さんはそういうつもりで触ってるわけじゃないのに、嫌でも意識してしまう。

ダメ、そんな子になっちゃダメ…おかしな事ばっかり考えちゃ、ダメ…

言い聞かせていると蝶？と呼ばれて、肩を少し跳ねさせた。
なんですか、と小さく返すと、ついでだから髪も洗ってやるよとゴムを解かれる。

おかしな気分を紛らわせるためにというのが半分、中也さんに触れていてほしいと思うのが半分…そんな気持ちで大人しくお願いした。

罪悪感しかない。
だけど、髪を洗われるのでさえドキドキしちゃってる私がいる。
どうしよう、どうすればいいんだろ