第11章 縁というもの
「!……そこまで…?」
「そうなんだ、芥川君で初めてだったらしくてね。泣きそうな顔をして必死に頼み込んできていた……だから恐らく、裏はある。蝶ちゃんが言うだけでも十分だが、芥川君までもがそう言うとなっては信憑性が高すぎるんだ」
感覚的に敵を察知することが出来る芥川までもが警戒を解けない相手。
力があるわけでもなければ俺らに比べて経験に長けてるわけでもなさそうなあの三人。
たかが二人の人間の予感、されど勘。
しかしそれを感じる人間が人間だ…警戒するのに十分すぎる条件なのだ。
「分かりました、そういう事なら…でもそれって、紅葉の姐さんには?」
「他には伝えないでおいてもいいかと思うんだ、あんなに相手から関わりをもとうとしてくるのも君のところくらいだしね」
首領の言葉に思わず苦笑いになった。
「あまりくっつかれてもいないのに警戒心を持たれても、かえって相手の方が警戒してしまうだろう。裏が見え始めるまでは泳がせておこうと思っている」
隠密部隊や芥川にはそれを伝えてあるそうで、もう既に警戒態勢を整えてあるらしい。
手際もいい、流石はこの人と蝶といったところか。
「勿論何も無いのが一番なんだけどね。何かを向こうが感じたとして、一番危なくなるのは蝶ちゃんじゃないかと思ってるんだよ」
「蝶が……ああ、まあ会議室であれだけ目立ってましたしね」
「それに僕達があの子を特別可愛がっているのも割れただろう?確かにあの子は強いけど、ただでさえどこかに狙われているのにとなるとかなり心配だからね。言うまでもないだろうけど、彼女は君を守りたがっているが…あの子の身体の事でもバレてしまえば、苦痛を味わうのは間違いなくあの子の方だ」
ドクン、と胸が波打つ。
身体の事もそうだが、それなら尚のこと、蝶の能力は隠し通さなくちゃならねえ。
あいつも恐らく、使わねえ覚悟をとっくに決めている。
「彼女が能力を使わない以上は、何が起こるか分からない。立原君を常に付けておきはするが、マフィア内でも怪しくなってきたからね。君がしっかりと護るんだ…もう彼女を誰かのところに捕まらせてしまってはならないよ」
君が無理をして死んでしまってもダメだけどねと声が響いてから、自身の目が冷たくなるのが分かった。
あいつが危なくならねえよう、こっちの脅威はこっちで潰すしかねえ。
「はい…今度こそ護ります」