第11章 縁というもの
「……休暇を、いただきます」
「!よかったよかった。これから暫くは抗争する予定も殲滅任務なんかもないし、組合との抗争のおかげというか、丁度少し長めの休暇をあげられそうだったんだよ」
「そう、なんですか…って、もしかして蝶が何か言ってたんですか?夏休みだしとか俺が仕事しすぎだとか心配して……」
ああ、それは大丈夫と首領。
先程俺抜きでされていた話がそういう事なのかと思ったのだが、どうやらそれは違ったらしい。
「それなら僕は君に言うし、何より彼女はそこまで言えるほどまだ子供になれていない。だから君が楽しませてあげるんだよ」
「…そう、ですね。はは、大人な上に意地っ張りな奴を子供にさせるって本当難しい……ありがとうございます、本当に」
「いやいや、これもあの子のためだ。それに中原君はこれまで休まずに何年分も仕事をしてきてくれているからね、自分へのご褒美だとでも思っておきなさい」
本当に頭が上がらない。
首領がこの人に変わってから、俺も蝶もどれだけ救われてきた事か。
「とりあえず蝶の休みを確認してみてから……ってそこにいますね、聞いてみます」
蝶がいるソファーの方に近寄って、まだ俺の外套を頭から被ったままの蝶に蝶、と呼びかける……が、何故だろうか、全く反応がない。
いつもなら一人で舞い上がっていてもすぐに何かしらの反応を見せるのに。
よっぽど今幸せなのか?
「おい蝶、俺だ。いい気分のところ悪いんだがちょっと聞きてえ事が……蝶?」
身体に手でポンポンと触れてみても反応がない。
試しにくびれている脇腹あたりにそっと触れてみるも……身動ぎ一つしねえ。
どういう事だこれは、あいつの弱い所に触れてみて、刺激をあまり与えねえような触り方だといってもこんなに反応がないなんてありえねえ。
流石に不審に思って頭の方から外套を引っぺがすと、蝶の顔が出てきた…が、しかしそれでも反応しねえ。
背もたれ側から移動して蝶の顔を覗き込みに行って、ようやくどうしてなのかが分かって、思わずふ、と口元が緩んだ。
「……なんだよ、驚かせやがって。そうだな、あんだけ半日気を張り続けてりゃ疲れてたよな」
蝶の前髪を少しだけ掻き分けてやって頭に手を置いて小さく撫でると、心なしか蝶の顔が緩んだ気がした。
「中原君?もしかして蝶ちゃん…」
「はい、寝てますね。幸せそうにしてますよ」