第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
蝶を起こして少ししてから、帽子を自分の頭に戻すと、それまで見えていなかった蝶の顔がちらりと見えた。
暖かかったし、柔らかかった。
しかし居心地がよかったのはここまでだ。
俺の何気ない言葉に大きく反応してこっちを見る蝶。
少しして、すぐに気がついた。
目が赤くなってるし、俺の服にも少しだけだがシミがあった。
それにまた、いつだったか俺が渡した指輪を通したチェーンが、少しだけ服から出ている。
極めつけは蝶の赤くなった、指輪を強く握りしめていたであろう跡のついた右手。
昨日蝶を助けに行った時等、ことある事にこいつは指輪を握る癖がついていたようだったから、何か俺絡みの事で不安に思って泣いていた、というのは流石の俺でも気づくことが出来る。
思えば昨日にも何度か見ていたように、俺に対して作り笑いなんてするようにまでなってやがった。
何てもん覚えてんだ。
大事なことに限って意地になって、俺に対して遠慮しやがる。
様々なイライラが募り、二人にならなければテコでも口を割らない蝶を、無理矢理引っ張って別室へと連れ込む。
しかし、蝶の腕を持ち上げてから気が付いた。
どう見ても、怯えていた。
腕を震わせて、何も言えなくさせてしまっていて。
何やってんだ俺は……これじゃあ昨日の奴らと、根本的な部分はなんも変わらねぇじゃねえか。
自分へのやるせなさに呆れて、出来るだけ蝶を怖がらせないよう、声色を優しくし、今度は頼み込むような形で問う。
成人した男がまだまだ小さい女子中学生を壁に押さえ付けてる図なんて、どう考えてもやばい図だし…蝶だって怖がって当然だ。
泣いて赤くなった蝶の顔に片手でそっと触れると、少し高い声を漏らして、蝶は大きく肩を跳ねさせた。
怖さでそうなっているのかと思い、優しく、蝶の頬を撫でるようにして慈しむ。
『ぁ、中也さ…ん、っ!』
しかし様子がおかしい。
蝶だってもう俺が怒っていないだなんてことわかってるはず。
なのにずっと肩を大きく跳ねさせて震え、悲鳴のような、何かに耐えるような声が響く。
『そこ、っ……ゃ、あ…』
首を触るのをどうやら嫌がっている蝶。
どうやらそのへんに原因があるらしい。
「首……まさか、首が痛むのか!?」
詳しく調べようと、首の色々な場所を探って手を当てていく。
『ちがっ…あ、ぁっ…んんん、っ!!』