第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『うん、…一緒がいい、っ』
「……昨日、もっと俺に何か言いたかったんじゃないのか?もっと、甘えたい事もあったんじゃないのか?蝶を不安にさせて、そんな夢まで見させてるのは、俺なんじゃないか?」
小さく放たれた言葉。
甘えてるよ。
私はもう、十分に中也さんに甘えてる。
私のこの、なくならない欲が悪いんだ。
中也さんに、もっと素直に気持ちを表現して伝えられたらいいのに…
『違います、私、もう十分甘えて…』
「それだよ。…遠慮してるだろ?俺に」
『ちゅうやさ……何を、』
「分かるんだよ、お前の事だけは。考えてることまで読み取れなくとも、変な所で俺に気ぃ遣っちまう奴なんだお前は。笑ってても、苦しんでる時がある。」
作り笑いをしてた時、気づかれてた?
『そんな、私中也さんと一緒にいるだけでも幸せで!』
「遠慮すんな…そんなもの、してくれんじゃねえ。利き手が赤いのだって、最近の癖なんだろ?指輪握ってんの…見てれば分かる。」
『わ、たしは…でも、好きなだけ甘えるだなんて、そんな図々しいこと、』
だって貴方は、そういう相手として私を見てくれてはいないのだから。
私にそういう魅力を感じてくれてるわけではないんでしょう?
「俺の頼みだ、頼む蝶…お前を苦しめてんのが俺なら、俺は自分を殺したくなる。お前には幸せでいてもらわねぇと、俺が俺じゃなくなっちまう」
中也さんの腕に力が入る。
もう、怖くない。
この気持ちをすべてさらけ出す勇気なんて私にはないけれど、この人は私を嫌わない、独りにしない、置いていかない。
だって、あんなに強い中也さんが、私の事でこんなに怯えて、震えているんだ。
____大切に、してくれてるんだ。
『……私の中也さんに甘えたい欲求は、四年間蓄積された分もあって、凄いんですよ?いつか無意識にストーキングでもして軍警に引き渡されないか心配になるくらいです。』
「どんときやがれ、俺だって、お前には頼られなかったりするより、甘えてきて欲しいんだよ…」
『そ、ですか…じゃ、今日はいっぱい手繋ぎましょ?それで美味しいものも食べて、また一緒に住む準備も』
「手、か…そうだな、いいぞ。……と、そうだ。そろそろ戻らねぇと到着までもうちょっとだったんだ。」
ほら、行くぞ
中也さんは、私の手を優しく取って、今度は歩幅を合わせて歩いてくれた。