第1章 蝶と白
「…そしてもう一つ。これは学校の先生達も知らないことだが。」
「横浜の、元ポートマフィアの一員、ってやつ?」
「おお、君なかなか勘が鋭いね!当たりだよ。」
そう言うと太宰さんは、朝もしたように私の頭を撫で始めた。
あ、良かった。怒ってない…
私、勝手な行動して、勝手に敵と馴れ合ってたのに。
今更ながら、またもや恐怖にみまわれたのか、腰が抜けて地面にへたりこんでしまった。
そして、とある事に気がつく。
『………あ、ごめんなさい太宰さん!私ポートマフィアが探偵社に来るようなこと言っちゃって…!!』
そう。私の居場所まで知らせたのだ。
誰かが来てもおかしくない。
「良いんだよ。四年も会ってないんだ、十分我慢したさ。私こそ、今まですまなかったね。会わせてやれなくて…」
太宰さんがそうやって優しくするから、また私が甘えてしまうんだ。
ごめんなさい。でも、ありがとう。
「さて、と。私ひとりで三人も運べないから、手伝ってくれるかな?赤羽君。」
え、赤羽君に頼むの?
「いいけど、俺が一人、お兄さんが一人、あともう一人は蝶ちゃんになるの?」
「……いや。」
『え?…あ!!』
私が一人運ぶ筈だったのだが、そこに一人、運び手がやってきた。
「国木田君、遅いよー!ほらほら、淳君運んでね!私は勿論ナオミちゃんを運ぶけど♡」
「太宰!行くなら場所を教えてから出ろ!今回のように、いつでも白石が動けるわけじゃないんだぞ!?」
あああ国木田さん、またストレスが溜まっていってる…
でも中島さんを担いでるのは流石。これができる大人ってやつか。
探偵社に着いて、赤羽君に出す用のお茶を入れてると、赤羽君から突然話しかけられる。
「俺も運ぶよ。」
『あ、ありがとう…』
そして、一服しようとお茶を飲みかけた時。
「好きな人……“中也さん”って人でしょ?」
『んぐっっ!!!?……ゲホッ、ゲホ、…は、はい、!?』
突然の内容に思わず混乱する。
てか気管入った。呼吸整えるの時間かかるよこれ。
「で?どうなの?はぐらかさないでよ。…好きなんでしょ、その人の事。」
中也さんの名前を出した少し前の自分を殴りたい。
恥ずかしすぎて涙出てきた、顔あっつい。
『……な、内緒、だってば。』
両手で顔を覆って、指の隙間から赤羽君を見ると、なにやら楽しそう。