第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
新幹線の出入口付近には、やはり誰もいなかった。
『あの、中也さん…手、ちょっと、』
「!わ、悪ぃ、痛かったか?」
『いえ、大丈夫です』
ぱっと離される手首に、少しだけ安堵する。
『それで、あの…』
「……お前、なんかあったか?」
『何か、…ですか?』
「ああ、何かだ。なんでさっき、目元濡らしてた…なんで、右手がそんなに赤くなってる」
じりじりと詰め寄る中也さんからは、黒々とした気配が漂う。
それが私に対してのものではないということはなんとなく分かってはいるが、私は中也さんからの殺気に怯むことしか出来なかった。
右手を掴んで上に上げられ、頬に手を添えられる。
首筋に擦れた中也さんの手に、勝手に体がびくっと跳ねた。
だめ、そこ、触られてるとなんかくる。
体がゾワゾワしてたまらない。
この変な感覚に耐えなければという、別の意味での恐怖も絡まって、いよいよ身体が震えてきた。
『あっ……ん、中也さ、…落ち着い……』
「俺は至極冷静だ。なんでそこまでして隠す?……泣いてたんだろ」
中也さんの指が優しく目尻を撫でた。
しかし、一緒に首筋と耳の下にも手が当たり、思わず声を抑えきれなかった。
『やっ!…ぁあ、…そこ、だめっ……ちゅやさ、っ…』
肩がビクビク上下に跳ねる。
だめ、擽ったいような、焦れったいようなこの感触。
頭がおかしくなりそう。
「ち、蝶?」
しかし、首筋が弱いのだということを分かってくれていないのか、手を離してくれない。
どころか、私の右手を離して、両頬に手が当てられる。
『ひゃ、っんん…、だめ、だめっ…手、!』
口でしか呼吸が出来ない。
上手く息が吸えない。
「手、って…」
『は、なし…て、首の、当たって…なんか、だめ、だからぁ……っ』
ぎゅっと閉じていた目を開いて、懇願しようとするも、中也さんの顔が見れない。
「首当たってって…まさか首が痛むのか!?それで泣いてたのかお前っ」