第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
頭上から聞こえる大好きな声。
あれ、なんか中也さん、声近くない?
それに、すっごい暖かいし…ここ、新幹線の中だよね?
『…ん、?』
左腕の中に、暖かさの正体はあった。
『………あ、ああのこれは…っ』
「あ?ああ、途中で俺がでかい声出して起こしかけちまって、そしたらこんな具合に…蝶?」
なんて事だ。ばっちりホールドしてしまっている。
何ということを…!
しかし、それと同時にとても安心した。
夢の中では届かなかった。
けど、今私の腕は、ちゃんと中也さんに触れてた。
よかった、中也さんがここにいる。
じわりと涙が零れそうになった。
『あ、ごめんなさっ…邪魔でしたよね!私ったらこんな体制で、あはは…』
それを悟られないようにするため、俯きながら体制を元に戻す。
「あ?ああ、別に構わなかったんだがな、暖かかったし。」
私は毛布かなにかでしょうか。
言い終えると、中也さんはいつの間に被せていたのか、私の頭から帽子を取り、自身の頭に被せた。
そう、いつの間にか被せられていたこの帽子が、外れてしまったのだ。
しかし私は何も考えずに中也さんの動作に反応してしまう。
『え、帽子?ち、中也さん!私、帽子取っちゃってたんですか!?』
焦って本人に聞いてみると、周りの先生や班員の子達がプっと吹き出し、中也さんに関しては真っ赤になってしまった。
「なっ、ち、ちげぇよ!!…ほ、ほらあれだ!暗い方が寝やすいだろ!?だからだな……って蝶、お前ちょっとこっち来い。」
中也さんは再び私に帽子を被せ、手首を掴んで車両間を繋ぐ扉へとずんずん進む。
『え、なんですか中也さん!?早っ…』
他の子達からは冷やかし等の声が小さく上がっていたが、それどころじゃあない。
手首、ちょっと痛い。
普段ならこんなに強く、中也さんは私を引っ張らない。
それに、こんなに早く先へと歩いて行きはしない。
私を離さず連れて行ってくれるのは嬉しい。
絶対に離さない、そう暗示するような中也さんの行為には、多少なりとも、あんな夢を見たばかりの私には少し安心するものがあった。
でもなんだろう、この雰囲気。
無言で進んでいっちゃう、前よりも大きく逞しくなった中也さんの背中。
それが、周りには分かりにくいくらいの、本当に僅かな殺気を帯びているような気がして。
少しだけ、二人になるのが怖かった。