第10章 名前を呼んで
頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めて擦り寄ってくる。
ここまで素直なのは酒のせいだろうが、ここ最近、こいつは本当によく本心を話してくれるようになった。
ようやく俺にわがままを言う事を覚えて、ようやく色々なものを強請るようになってきた。
こいつの心を最初に掴んだ織田はちゃんと言っていたじゃあないか、子供のような奴だと。
子供のような面がある、大人になりきれていない部分がある。
しかしただの一度も、子供であると断言してはいなかった。
そして蝶に迫られる時、俺はいつも焦って忘れてしまっていた。
大人になりきれないだけじゃない。
子供にだって、なりきれない。
わがまま一つも言えなかった蝶が、意地を張ってでも意見を曲げないだなんてこと、四年前までは普通見ねえようなもんだった。
ここまで言えるようになった蝶を泣かせてしまうだとか、そんな事はもう関係ねえ。
いいのか?あれだけわがままは言うものだと教えてきていて、ようやくわがまま言ってくれるようになった…ようやく子供になれて、少し大人になれた蝶を、突き放すような真似をして。
「………蝶、お前、本気でするつもりか?正直こんな事をする奴が全員ってわけじゃねえぞ。大人がするだなんていった情報も、間違いだ」
『…じゃ、したい。ちゅーやさんに……したい』
したい、そう強請られてさらに欲情してしまっていては、威厳も何もあったものじゃない。
かなりキツイのは正直なところだが、こんな事をさせるといったことにさえも興奮してしまうものがある。
『私がしたい……それならいい…?』
「…ッ、無理だと思ったらすぐやめろ。いいな、約束だ……途中でやめてくれたって構わねえから、無理だけはするな。それが約束出来んなら…………いい」
『!……ん…』
蝶の肩から手を離して、慈しむように頭を撫でる。
なんて綺麗なやつ、こんな事をしてるってのに、こいつはやっぱり綺麗なままだ。
……なんて可愛いやつ。
俺みてえな奴のためなんかに…こんな処理なんかのために、恥ずかしがりなくせして必死にわがまま言って。
サラリとゴムを外して髪を解くと、更に色気が溢れる少女。
恐る恐る俺の下着に手をかけて、痛いくらいに主張するそれを外気に触れさせる。
酔っていても流石に初めて見るそれには少し怯んだようで、ピクリと身体を震わせて、蝶は目を閉じてしまった。
