第10章 名前を呼んで
「………な、出来たもんじゃねえだろ。無理しなくていいから、とりあえずしまっ……ッ、!」
目を閉じたまま、蝶はそこに指を直接ピタリと添わせる。
痛くはなかったが、流石に直接触れられるのは敏感なもので、身体につい力が入る。
『…ね、ねえちゅーやさん……』
「あ…?なんだ、言いてえ事があるんなら言ってみろ…」
なんとか息を整えながら脈打つそれを戻しもせずに、薄らと目を開ける蝶を撫でながら、出来るだけ怖がらせねえように柔らかい口調で言葉を紡ぐ。
『ん…ど、どうやったらいーの……っ?』
しかし、少女から発せられたまさかの問いに、ついはっ?と間抜けな声を出してしまった。
「お、前ッ…岡島の本で学習したんじゃ……」
『ひ、人伝いに聞いた事があっただけでその…っ』
「ん?…つうか待て、お前その反応……」
ビクリと肩を震わせるそいつに、俺の中で抱いた予測が確信に変わった。
「お前……酒、抜けてんだろ」
『ぁ……っ、…で、でも私の意思…で……』
いつからだ…一体どこからだ。
自分の事で精一杯になってて、全く見抜けなかった。
「ハァ…ったく……とりあえず、触れるだけじゃなくて持ってみろ…ッ、そう、あんま力入れんなよ」
蝶に持たれただけでも先走りが出てしまう。
くそっ、煽られるだけ煽られておいて焦らされた結果がこれだ、情ねえ。
そのまま上下に手を動かしてみてくれと言うと、ゆっくりと手を動かす蝶。
蝶にされてるっつうだけでも興奮すんのに、こんなに綺麗なこいつにこんな事をさせているだなんて…
背徳感と、征服欲。
二つが同時に満たされて、それだけでも感じさせられる。
「……ッ、はっ……、蝶、お前…っ、どんだけ知ってる」
『!…な、舐めるって事……と…………』
「…ッッ!!?…おま、っ……」
先走りを指に絡めて先端に触れられた。
それに感じて、更に息が荒くなる。
こんなにいいもんなのか、直接触れるのは…触れられんのは。
薄目で蝶の様子を見ると相手も少し興奮してきているのか、顔を紅潮させ、浅い呼吸を不規則に繰り返しているようだった。
『……男の人も一緒、なんだね。これ…中也さんが教えてくれたんだよ』
「ま、じで順応性高すぎな、お前……っぁ…、ハァ…」
なんてところまで学習してやがるんだ。
小さな手によって、どんどんと自身を増大させられていった。
