第10章 名前を呼んで
『ん……ッ、…はぁ…っ、ちゅーやさん好きぃ…』
「…俺も、大好きだ」
『ぁ…ッ、んぅ……っは、……ちゅーするの、すき』
まだ触れるだけのキスしかしていないはずなのに、目の前の少女の頭がそういう方向に切り替わっちまったのが感覚的に分かってしまった。
右手で蝶の頬に触れて、桜色の唇にフニフニと親指を当て、柔らかさを確かめるようにそこを撫でる。
するとピクリと肩を揺らすのだけれど、小さく声を漏らしながら気持ちよさそうに目を蕩けさせる。
……完全に持っていかれた。
なんて単純なんだ俺は、まだキスして少し唇をいじったくれえのもんでそいつに欲情して反応しちまうだなんて。
『ッ…ぁ、ぅ……っ!……は、へぁ…っ!?』
小さなその口に割入るように親指を滑り込ませて、蝶の舌を中で撫でる。
流石に酔っているといえども蝶はやはり蝶であるらしく、感度もいい上、いい声をあげてくれやがる。
口の上部をなぞってやれば、甲高い声と共に肩を大きく跳ねさせる。
そしてすぐに俺の胸に身体を預けて、俺のシャツをギュッと握りしめる蝶。
『は…ッぅ……、ぁ…ッ』
肩で息をして必死に呼吸をする様は、俺を煽るのには十分すぎるものだった。
だがいけねえ、こいつは酔って気分がおかしくなってるだけだ、合意も無しに進むんじゃねえ。
『はぁ…っ、は……ッふえ、っ?』
蝶の口から親指を抜いて頭を撫でてやると、物足りなさそうな目で見つめられる。
んな顔してんじゃねえよ、これ以上俺の理性をぐらつかせるな…
「…どうしたよ、んな顔して。まだ足りねえってのか?」
『………!…』
「蝶?……!蝶、お前何して…ッ!!」
蝶が何かに気が付いて上体を起こして下の方に移動したかと思えば、意地でも今まで触らせようとしなかったそこをズボンの上から撫でる蝶。
すぐに気が付いて止めようとしたものの、上体を起こす寸前に刺激に負けて身体が反応する。
嘘だろ、これがあの恥ずかしがり屋の蝶____?
『………できる、よ?…ちゅーやさんになら…して、いい』
俺を下から見据える少女はいつもの少女なんかじゃない。
そうだ、元々こいつは身体が子供になっちまっただけで、性格なんかのせいで大人びて見えちまうような奴…
今、すぐそこにいる蝶が…俺の中で、ただの女に見えちまう。
「く、っ……蝶、俺はいいからとりあえず離れろ」