第10章 名前を呼んで
『……!立原だぁ!!』
「てめえ俺の名前一瞬忘れてやがっ『立原ぁ~♪』うおお!!?な、なんでいきなり俺にッ!!?」
えへへ〜と立原に抱き着いてギュウッとしていると、私を離すことなく立原が他の皆に声をかける。
「…おい、こいつはどういう状況だ?俺今、いきなり迎えに行ってやれって言われたばっかりなんだが」
『?ちゅやさんのとこいくんじゃらいの??』
「ん?あ、ああ…幹部のところに連れて行けばいいんだろ?」
『!うん!!立原も好き♪』
「んな…ッッ!!?……お、おい、マジでどうしたんだよ」
「「「ワイン飲んで酔った」」」
「ワインだと!!!?てめえら蝶になんて事を…」
そこから一向に動こうとしない立原にグッと顔を上に向けて、ちょっと、と声を出す。
『ちゅーやさん…ちゅーやさんまだあ??』
「!!そ、そうだな、幹部のところに連れて行ってやらねえとな」
『ちゅーやさん』
「あ?だから幹部の『ちゅーやさん!!』……ち、中也さんのところな、分かった分かった…てめえら覚えとけよ、とりあえず蝶は連れて帰る。じゃあな」
ほら、中也さんのとこ行くぞ、と言う立原に気分を良くして腕に抱き着いて、そのまま外に出て行った。
「家で良いんだろ、着いたぞ」
『家…ッ、帰ってきたぁ…』
「!……そうか、お前昨日は拠点に泊まったんだったな。ほら、もうちょっとで会えるぞ…立てるか?」
『立てる〜…ちゅーやさんとこ行く♪』
「はいはい」
エレベーターに乗って上に登っていき、立原の腕にひっついたまま中也さんの部屋の前まで移動する。
立原が入口に付いたパネルを操作すると中からああ?と低めの声。
『ちゅーやさん!!蝶だよ!!帰ってきたの!!』
「蝶?…ちょっと待ってろ、すぐ行く」
中也さんは本当に宣言通り、すぐにドアを開けてくれた。
中也さんの姿を見て小走りになってそちらに移動し、ようやく会えた中也さんにギュウッと抱き着いて甘えつく。
『ただいまぁ…ちゅーやさん会えたぁ……♡』
「あ、ああ?そうだな、おかえり蝶…で、立原。何があった?」
「…………それが、探偵社でワインを飲まされたらしく…酔っているんだとか」
「ワイン…!!?どうりでこんな…っ、厄介なことをしてくれた……!!」
「厄介なこと??」
「こいつ、酒癖かなり悪いらしいんだよ…」