第10章 名前を呼んで
『あー幸せ…これならチーズケーキともう一個の方のチョコケーキも買ってきたらよかった』
「本当に食べちゃったよこの子、本当に胃袋どうなってんの」
「こんなちっさい身体のどこにこれだけの栄養が……ん?」
与謝野先生の声に、何故か次第に周りの目がある部分に集中してくるのが分かった。
「……さあ谷崎、俺達は残りの飯を食べるとしよう」
「そうですね国木田さん、僕何も気付いてません」
『…………そうだよ、こういう心配りが必要だよあの人には…!』
中也さんの事を思い出して余計に恥ずかしくなって、頭を抱えながら胸元を押さえた。
「なんて羨ましい成長具合…」
『小さいの着けてるのになんで…っ?』
「小さいのを着けててそれかい?本当に糖分全部そこに蓄積されてるんじゃないのかいそれは」
『ま、まさかこれが原因……あああ、でも甘いもの食べないなんて無理…!!』
一人で葛藤していると、与謝野先生からまさかの発言が投下される。
「そんなに気にせずとも、持ってて損するようなもんでもないんだし…丁度いいサイズのものでも着けてみればどうだい?中原中也も喜ぶだろう」
『!よ、喜ぶ!?そんな事で喜ぶんですか!!?』
中也さんというワードに飛びついて、食い入るように与謝野先生に熱い視線を向ける。
「ま、まああの男はあんたにベタ惚れだろうからね…一回試しにちゃんとしたサイズにしてみてから擦り寄ってみなよ。もしかしたらいつも以上に可愛がってもらえるかもしれないよ」
与謝野先生の言葉にナオミさんは笑っていて、国木田さんと谷崎さんは何故だか吹き出していた。
与謝野先生も何だか楽しそうにしているし、ただでさえ日頃から私を甘えさせてる中也さんがいつもより甘えさせてくれるだなんてどんな風になるんだろうと想像してみる。
私にいっぱいプリンを買ってきてくれる?…いや、割とあるなこれ。
気が済むまで頭を撫でてくれて……これもある、私が遠慮し始めても続けられる。
『いつもより…いつもより……?可愛がってって…撫でてギュッてしていっぱいちゅーでもするのかな』
「「「「「ブッ…!!!?」」」」」
『え!?何!?』
突如噎せ始める周り。
さっきまで楽しそうにしていた与謝野先生やナオミさんまでもが噎せている。
「ち、蝶…ッ……あんた本当に可愛いねえ」
「これは奥手にもなりますわね…」