第10章 名前を呼んで
男性陣は殆どが首を傾げていて、また教えてやるよ、と与謝野先生が笑ってそれに返していた。
そうこうしている内に谷崎さんがお皿にロールケーキとケーキを三切れずつ乗せて持ってきてくれて、その量を見て国木田さんも与謝野先生も、ナオミさんも少しだけ顔を青くする。
「はい蝶ちゃん、とりあえずこれだけ持ってきたんだけど」
『!ケーキ!!!本当にこんなに食べていいの!?』
「う、うんいいよ!なんならもう皆お腹いっぱいケーキ食べてるから、好きなだけ食べちゃっていいよ!!」
『やったぁ…!!!』
フォークとお皿を受け取って、パクパクとテンポよくケーキを食べていく。
先程までの食事なんて無かったかのように手が進んで、甘いケーキに幸せになる。
『ん〜…やっぱり美味しい……今度またケーキも食べに行こっ』
「谷崎、嬉しいのは分かるが顔が緩みきってるぞ。甘えられて嬉しいってことだけはよく分かったがな!!!」
「すみません国木田さん、お先です」
「くっ、まさかこんなに簡単な方法があっただなんて…」
ペロリとケーキをたいらげると、今度は冷蔵庫にしまっておいたはずの箱が丸々一つやってきた。
目の前で谷崎さんがそれを開けてくれて、綺麗にナイフで切り分けてくれる。
「ま、まさかこれ、本当に一人で食べれるっていうのかい?」
「さ、流石のナオミもこの量はちょっと…」
「今日デート中にも、スイーツ店八軒回って、全メニュー制覇してきたらしいよ」
谷崎さんの言葉に全員がうっ、と声を漏らして口元を押さえる。
『……ま、まだ?』
手が止まった谷崎さんを急かすように目を向けると何故か感涙され、すぐに終わるからもうちょっとだけ我慢しててね!!と泣きながらケーキを切り分けられた。
『わあ…ッ、ほ、本当にこれ食べていいの??』
「「「食べれる人間が他にいないんだよ」」」
『や、やった…食べ放だ……!太宰さんの分ワンホール残しておかなくちゃ』
「「「あいつにどれだけ食わせる気だ…!!?」」」
とりあえずこれを食べてからだと促されて、それもそうかと考えて再び手を進めていく。
磯貝君が働いているという事を抜きにして、本当に美味しい店だ。
東京の方での常連になっちゃいそう。
止まらない手を動かして、結局二種類のケーキを三切れずつ残した状態で、残りのケーキを全て一人で堪能した。