第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
夕焼け空
横浜の港で、中也さんと二人で立っている。
それだけで幸せ、一緒にいれるだけでも、お互いが幸せを共有できる。
手を繋いでもらって、暖かくて…
しかし、それは突然訪れる。
『ちゅ……やさ、?』
私は大量の水に阻まれ、中也さんを見えなくしてしまう。
こんなにいっぱいの水…海水?
どれだけ手を伸ばしても、もがいてみても、中也さんのシルエットはぼんやりと見えているのに、届かない。
ダメだよ、中也さんを連れてかないで
彼を掴もうと、両手を伸ばす。
それでもやっぱり届かない。
なんで、どうして連れて行っちゃうの?
そこでふと気が付いた。
私が見ているのは、彼のシルエット…
逆光によってでしかそれは見ることは出来ない。
そうか、水の中にいるのは私の方か。
もう気力も失ってしまった私は、抗うことをやめ、身を任せる。
中也さんのシルエットは見えなくなっていた。
中也さんなら私のこと、大事に思ってくれてる。
_本当に?
見捨てたりなんて絶対にしない。
_しつこくつきまとって、都合の悪い時だけ勝手にどこかに行ってしまうような私を?
何があっても嫌ったりしない。
_恋愛対象として見てるのは私だけ。本当は凄く凄く迷惑かもしれない。中也さんが優しいから、言えないだけなのかもしれない。
中也さん、私、また離れなくちゃならなくなるのかな?
その時、見捨てられちゃうのかな?
私が想い続けてて、嫌になって独りにしたりしないかな?
無意識に首元の指輪を握りしめる。
今の私の指よりも少し大きい指輪。
水の中も、暗いところも…嫌い。怖い。
それでも何より、貴方に見捨てられちゃうんじゃないかなんて考えちゃう自分が一番嫌い。
また中也さんと離れちゃうんじゃないかって、今度はもう探してももらえないんじゃないか、心配なんてしないで喜ばれるんじゃないかって。
______そばにいないと、恐ろしい。
どうかもう、私と離れないでいて。
海底から私の足元に忍び寄る影がひとつ。
これは“あの男”?それとも……
「よ……蝶!」
『!……へ、あ…』
脳が覚醒するのと同時に、右手で掴んでいた指輪を服の中に戻した。
目尻が熱い。
今回のは変な夢だった。
それでもとても怖かった。
「蝶?もうすぐ着くから起こしたんだが…そんなに今日眠いのか?」