第10章 名前を呼んで
飾り付けも終わったらしく、遂に買ってきたケーキの箱に皆が集中し始める。
「……五箱?」
「かなり大きくない?ていうかなんで五箱…」
『え、これくらいなら食べるかなって…かなり少なめに買ってきたんですけど』
一斉に私の方に目を向ける皆に首を傾げていれば、ナオミさんでさえもが焦ったように私に話しかける。
「ち、蝶ちゃんは因みに、どれくらい甘いものを食べられるんですの?」
『食べようと思ったら永遠に食べ続けられますよ、甘いもの!今日も八軒分全メニュー制覇してきたんですけど、どれも美味しくて……あ、買ってきたケーキは最近気に入ってるところのやつでですね?クラスの子がバイトしてるお店でパフェが特に美味しくて____』
「「「分かった、もういい。余った分は全部あげるから」」」
口を揃えて言われた言葉にパッと目を輝かせて、本当ですか!?と返す。
「鏡花ちゃんに丸々一つあげたとして、全員が限界まで食べてもこれだけ大きくて質量もあると絶対残る」
「僕の超推理ではロールケーキ一つとホールケーキ二つは確実に蝶ちゃんのものになるね」
「ていうかよくもまあこんなサイズのケーキがあったねえ?寧ろあんたの胃袋よりその喫茶店の方が気になるよ」
谷崎さんと乱歩さんに続いて与謝野先生から疑問を投げかけられる。
『ああ、元はそのメニュー無かったんですけど、初めて行った時に私がかなりメニュー食べちゃって……その量を見てそこのオーナーさんが、私でも満足しそうなサイズのスイーツを作り始めたらしいんです』
これは全て磯貝君情報だ。
私の携帯に入っていた通知の中には皆からおすすめの甘い物の情報も混じっていて、磯貝君から入っていたメッセージに、私を気遣う文面の続きで書かれていたもの。
皆なりに私を元気づけようとしてくれたんだとカルマ君からメッセージが入っていて、それを読んで行きの電車の中でクスリと笑ってしまったのを思い出した。
「あんたが満足しそうなって、それでもこんなに買ってきたんだろう?」
『皆さんこれくらいなら丁度食べ切れるかなって思って』
「「「いやいや、無理だから」」」
ロールケーキとホールケーキを一つずつ開けて、それ以外は冷蔵庫を丸々使ってしまわれてしまった。
皆で食べると美味しいのに。
なんてケーキについて話してる内に、事務所の扉がノックされた。
「!来たよ」