第10章 名前を呼んで
歓迎会を終えたら首領にメールを送るということで電話を切って、乱歩さんに向き直る。
『さ、流石乱歩さん…首領の事まで分かるだなんて』
「今はあまり褒めないでくれ。こんな事態は初めてだしすっごい悔しいんだ今。ポートマフィアの方も恐らく調査に入るだろうから、こっちは太宰と協力してちょっとでも手掛かりを掴めるようにしていこう」
『すみません、本来なら私が解決しなくちゃいけないものを…』
「いいや、中原君の言う通り、君が直接行くのはやめておいた方がいい。それこそ相手は蝶ちゃんの事を殺そうとも思えるし、今はクラスの方を優先している方がいいだろうから」
クラスの方……そうだ、狙いはまず私であるというだけであって、大元の狙いは皆の方。
あちらに何かがあった時、私は死んででも皆を守らなければならない。
仕事や任務があるからだとかそんなものはもう関係なくて、皆私の大切な友達なんだから。
一回死んじゃったりでもしたら、本当にそこでお終いなんだから。
『わ、分かりました…今日からもう、能力使うのはやめておきます。有事の際のテレポートはともかく、それ以外では漏らさないようにした方がいいんですよね』
「ああ。というかそのための念のための護衛だからね。多分立原君とやらは喜んで了承してくれるだろうから、敵の目星がつくまでは能力は禁止。OK?」
『はい…』
顔を再び俯かせると、サラリと頭を撫でられて、乱歩さんの手が優しく乗せられる。
この人がこんな事をするだなんて久しぶりだ。
そう思って顔を上げると、乱歩さんは私の方を見つめていた。
「君の事は太宰からちゃんと皆話を聞いた。元々ポートマフィアにいた事やそこでの立場や強さなら分かってたけど、流石に予想もつかないような事が多くてこの僕でさえもが驚かされたよ…よく頑張ってきたね」
『え…ッ』
思わず乱歩さんの目を見つめると、優しく優しく微笑んでくれた。
「大丈夫、君の味方はいっぱいいるから。中原君にも甘えられないような時があれば、誰に甘えにきてもいいからね…僕は中原君と殺せんせーに連絡を入れておこう。護衛の件と僕の見解を二人にも伝えておく」
蝶ちゃんはとりあえず今は気持を切り替えて、歓迎会楽しもう!
いつもの笑顔に戻った乱歩さん。
___よく頑張ってきた
言葉とあの表情が、重なって見えた。
大好きだった、織田作さんと