第10章 名前を呼んで
『……白鯨で私を殺そうとした相手とは、別物なんですね?』
「ああ、そことは別物だ。だけど君をどうにかしたいという目的が同じな以上、手を組んでいるという線が強い。今はまだ様子見と偵察段階だろうけど、盗聴器を仕掛けた方の相手の腕はかなりのものだ。君は対処できたとしても、他の人間はかなり危ない」
『…あんな気持ち悪い存在感を放つような手練、並の暗殺者なんかじゃない』
その通り、と続けられ、ゴクリと喉を鳴らして続きを聞く。
「そしてその相手が唯一敵わないと敵視しているのが君だよ。君の能力は特殊なものな上、データや情報も蝶ちゃんは自分で守っているから、対処法も思い付かない。だから、何かしら君の足を封じる策を考えてくるはずだ」
ただしその相手は、自身の情報を漏らさないよう横浜の方で直接関与するつもりはないらしい。
乱歩さんさんの見解に少し考えてから、自分の中で気付いた事を口にする。
『それって……白鯨で私に手を出した方の組織が横浜にいるって事ですか?』
「そうだと僕は見てる。そこまではなんとか分かったんだけど、それ以上はその盗聴器を仕掛けた方の人がかなり頭が回るらしい…犯人の特定が出来ない」
私に首輪を付けた男の子は雇用者…或いはどこかから連れ去られてきた奴隷のようなものだろう。
彼の意見に私も賛同出来、そしてだからこそ、犯人の特定が出来ないのだと悟った。
あの子に罪はないからと見逃した私の落ち度だ。
まさかこんなに複雑な事態になっているだなんて思わなくて油断していた。
『!でも、横浜の方の相手の目的は、やっぱり私を殺すことなんですよね?わざわざ組合に潜入してまであんな事をするだなんて』
「いや、それがそうとも言いきれない。そうだと見せかけられているような気がしてならないんだ…もしかしたら君の意図していないようなところから刺客が現れるかもしれないし、僕の予測も出来ないような自体が起こるかもしれない」
とりあえず外で警戒心を解かないようにするのと、出来るだけ能力を人に見せないようにする事。
乱歩さんからそれを徹底するよう言われて、私も深く賛成した。
そしてそれで終わりかと思いきや、乱歩さんからまさかの提案がなされる。
「……蝶ちゃん、ポートマフィアに仲のいい子がいるだろう?学校に行く時や外出する時なんかに、護衛についてもらった方がいい」