• テキストサイズ

Replay

第10章 名前を呼んで


『い、いいですけど…この塗料はやめておいた方がいいんじゃ?』

「そこは大丈夫、犯人の特定は全くもって出来ないけれど、目的が僕達でないという事だけは明らかだから」

『探偵社じゃないって、どうして……!そうか、それだったら住所なんて公開されてるし、殺そうと思ったらいつでも手が出せる』

私の言葉にそう、正解。と返して、しかしまた複雑な顔をして乱歩さんは考え込む。

「それにしてもおかしい、僕達を狙っていない理由が…蝶ちゃんの言っていた話を聞く限りでは、これはとんでもない事態だよ」

『とんでもない事態……?探偵社を狙ってない理由って…』

乱歩さんは少し間をおいて、普段滅多に開かれることのないその目を私に向けてから、冷や汗を流し、声を低くしてから言った。

「……これを仕掛けた人間は、君に首輪を付けた組織のボスなんかとは比べ物にならない程の力の持ち主だ。僕に正体が分からないと言わしめる程のね…探偵社員は確かに異能持ちだし強い」

けれど、と続ける乱歩さんの言葉に、今度こそ何も考えられなくなった。

「この犯人が探偵社を襲わない理由は、単に探偵社など相手にもならないからなんだよ……異能を使っても勝ち目はない。勝ち目は全くないのだけれど、殺したところで与謝野さんの異能で綺麗にリセットされる。無駄に時間と労力を費やすだけだ」

『探偵社が相手にならないって……!じゃあ私を狙う理由は!?あんな所でこんなものを仕掛けるだなんて、何かあるはず…』

「狙いが蝶ちゃん…うん、“今回の”狙いは確かに蝶ちゃんだ。しかしゆっくりもしていられない。この犯人は確かに君を狙ってはいるようだけれど、本来の狙いは恐らく、君を含めたE組の生徒達だ」

まさかの狙いに、頭がついていかなくなった。
本来の狙いはE組?
E組の生徒が狙いだなんて、そんな事を考えるような人…

『……それって、裏社会の人間って事ですか。殺せんせーを…暗殺の標的を殺すためにじゃないと、E組全員が狙われるだなんておかしな話になるはずがない』

「そういう事だ。生憎僕はそこまで暗殺者に関して詳しくないし、目星をつけられるような知識もないし勘もない。だから蝶ちゃん、こんな事しか言えないのは非常に心苦しいんだが……まず相手最初に攻略したがっているのは、間違いなく君だ」

乱歩さんの警告が、嫌に胸を波打たせる。

「___気を付けろ」
/ 2703ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp